重文指定「氷川丸」に熱視線 グッズ販売好調  日本郵船歴史博物館

 国の重要文化財に指定された日本郵船の貨客船「氷川丸」に熱い視線が注がれている。氷川丸をイメージしたおしゃれなグッズが次々と登場。子ども向けの絵本が出版されたほか、アニメ映画が上映中だ。幅広い世代に関心が広がることで、戦禍を生き抜いた86年間の歴史を次代に伝える動きが進んでいる。

 氷川丸の“解剖図”が描かれた一筆箋やブロックメモ、本革のコースターやコインケース−。日本郵船歴史博物館(横浜市中区)のミュージアムショップには8月の重文正式指定に合わせてオリジナル商品が登場した。

 船の油彩画や模型、日本郵船の社史なども扱っており、小物類だけで約120種類。氷川丸関連では一筆箋やクリアファイルなどの文具が売れ筋という。

 同館では企画展「まるごと氷川丸展」が12月25日まで開催されている。後期を迎えた今月4日からカラースキーム(客室デザインの原画)などを展示替えしたこともあり、市民だけでなく氷川丸ゆかりの氷川神社がある埼玉など県外からも団体客らが訪れている。

 専門的に知りたいというファンには氷川丸関連の図書が好評。企画展の図録と氷川丸ガイドブックを2冊セットにして手に入れる人が多く、かまくら春秋社(鎌倉市)が昨年5月に出版した「氷川丸ものがたり」(伊藤玄二郎さん著)も着実に売れている、とショップ担当者は話す。

 同ショップや有隣堂など県内の書店では、かまくら春秋社が今月1日に出版したばかりの絵本「こうちゃんの氷川丸」が店頭に並ぶ。作者は、同社の嘱託で氷川丸ものがたりの編集を担当した田村朗さん(61)=横浜市戸塚区。

 戦時中に病院船だったことに着目し、主人公の曽祖父が南洋の戦場に出征したことを引き合いに、「次世代につながる命の大切さを伝えたい」と絵本に託した思いを明かす。その上で「戦争体験者が少なくなる中で、子どもに読み聞かせてほしい」と願う。

 昨年公開され、11月のハワイ国際映画祭に出品が決まったアニメ映画「氷川丸ものがたり」の上映会が横浜市内各地で行われている。30日には同市泉区の泉公会堂で催され、原作者の伊藤玄二郎さんがミニトークに登場。平和な海の尊さを訴えるという。

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