後を絶たない保育現場での子どもの性犯罪被害 平塚・乳児死亡

 保育現場で子どもが性犯罪の被害に巻き込まれるケースは後を絶たない。待機児童解消に向けて保育施設の整備は進むが、職員やスタッフの質の確保は現場の「自助努力」に委ねられているのが実情だ。

 保育所内で裸の写真を撮られたり、わいせつな行為を受けたりして乳幼児が被害に遭うのは、今回の事件だけではない。

 埼玉県富士見市のマンション一室で2014年、当時2歳の男児を窒息死させたとしてベビーシッターの男が逮捕された事件では、約20人の乳幼児が下半身を撮影されたり、わいせつな行為をされたりした。

 背景の一つには、待機児童が問題になる中で受け皿となる保育施設が増える一方、保育士不足が深刻化し、質の確保が難しくなっているといわれている。

 県によると、4月1日現在の「認可保育所等」(認可保育所や認定こども園など)は1904カ所で前年比184カ所増加し、総定員は13万8721人で8844人増えた。その一方で、「(なり手不足で)保育士の需要は供給を上回り、都市間での競合が起きている」(県次世代育成課)。

 子どもの安全をどう確保するのか。横浜市は厚生労働省の指針に基づき、認可保育所には1〜2年に1回の「監査」、認可外保育所には年1回の「立ち入り調査」を実施し、職員やスタッフを雇う際には職歴を確認するよう注意喚起する。

 ただ、行政の対応だけでは限界がある。「施設同士での保育士の奪い合いが激しい。資質に欠けていると思われる人を雇わざるを得ない状況もあり、質の確保は現場の努力に任せられている」。県内で私立幼稚園を経営する男性は、そう打ち明ける。

 これまで犯罪につながるような事態は経験していないが、いち早く予兆に気づけるように自ら現場で目を光らせたり、職員を集めて食事会を開いて信頼を深めたりする工夫をしているという。

 「預ける場所をつくっても保育環境が整っていなければ、こうした事件はなくならない」と男性は指摘する。「社会のひずみのしわ寄せを受けるのは、子どもたちだということを忘れてはいけない」

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