米軍基地が立地する街、市民に期待と戸惑い 神奈川県内、米大統領選受け

「基地問題を再考する契機に」。在日米軍の撤退も示唆していたトランプ氏が米大統領選を制したことに、基地の足元で“トランプ効果”を前向きに捉える声が上がる。だが勝利から一夜明けた10日には、安倍晋三首相と「同盟強化」で一致するなど、真意は不透明さを増すばかりだ。基地負担を強いられる市民に、期待と戸惑いが交錯する。  米海軍厚木基地(大和、綾瀬市)と米陸軍キャンプ座間(座間、相模原市)が立地する県央地区。日本への米軍駐留経費の負担増か撤退の選択を示唆してきたトランプ氏に、地元の市民団体は「選挙戦でのキャンペーンと実際の政策は別物だろう」と推察するが、基地縮小の期待もある。

 基地撤去をめざす県央共闘会議の桧鼻達実共同代表(67)は「国内全ての米軍基地が本当に必要か再考し、対米一辺倒の外交を改める好機だ」。厚木基地の騒音解消を求める第4次訴訟=最高裁で係争中=の原告団長、金子豊貴男・相模原市議(66)も「騒音解消は悲願であり、撤退は歓迎」とした上で、「真意はどうあれ、この節目に問題提起されたことは意義深い」と、今後の動向を注視する。

 一方、「自衛力増強の口実にされては困る」と不安を漏らすのは、厚木基地爆音防止期成同盟委員長の大波修二・大和市議(70)。米軍撤退が現実味を増せば、自国防衛の強化という論理にすり替えられかねず、基地周辺の環境改善は見通せなくなるからだ。

 米陸軍が司令部を置くキャンプ座間の恒久化に反対してきた住民団体代表の加藤陽子・座間市議(52)は「撤退するに越したことはないが、指導者が交代するとはいえ、外交政策が大きく転換するとは思えない」と静観する。

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