先輩へ「恩返し」誓う桑原 切り込み隊長の胸の内

 横浜DeNAの切り込み隊長として活躍した桑原将志が、早くも来季への思いを強くしている。今季限りで現役を退き、球団職員となった高校の先輩・柳田殖生氏(34)に恩返しするためだ。レギュラーをつかんだ23歳は「今年1年だけじゃ駄目。もっと柳田さんに活躍した姿を見せる」と誓う。

 5年目の今季、桑原は「1番・中堅」の座を勝ち取った。自己最多の133試合に出場、積極的なプレースタイルだけでなく、試合後の取材で発する言葉にも成長ぶりがにじみ出ていた。◆一打席を全力で 活躍しても「次の一打席も全力で行くだけ」と浮かれることはない。2年前、当時の中畑監督からムードメーカー役として抜てきされたが、今では「お立ち台のパフォーマンスより、プレーでお客さんを感動させたい」と主力選手としての自覚が芽生えてきている。

 昨季までは結果が出ればお祭り騒ぎし、凡打に終われば「落ち込んで、次の打席も引きずっていた」と波に乗っても長続きはしなかった。“1軍半”だった桑原が、考え方を変えたきっかけは開幕前、福知山成美高(京都)の先輩、柳田氏がくれた言葉だった。「先発も代打も同じ。一打席に全てを懸ける気持ちでやったらどうだ」。柳田氏は一度は野球から離れ、クラブチームを経てプロ入りした経験がある苦労人。その言葉は重かった。

 今季は「どんな結果でも切り替えて次に備える」と心に決め、コンスタントに安打を重ね、シーズンを通して打率2割8分4厘を残した。

 柳田氏は10月に戦力外通告を受けたが、真面目な人柄や取り組み姿勢が評価され、球団の編成部門で働くことが決まった。自身はレギュラーから程遠いプロ生活だったからこそ、「まだ褒めたくない。あいつは褒めたらまた調子に乗るからさ」と、後輩が一度つかんだチャンスを離さないことだけを願っている。

 桑原もその思いに応える覚悟ができている。「柳田さんは常に自分のことを思って言ってくれる。もっと活躍した姿を見せて恩返ししたい」◆基本の大切さ説く 横浜DeNAの今永昇太、桑原が講師を務める親子野球教室が10日、横須賀市内で開かれ、今永がキャッチボール、桑原がティー打撃を指導した。

 今永が「キャッチボールはとても大事。プロも毎日やっている。うまくなればプロに近づける」と基本の大切さを説くと、小学3年の山田雅斗君(9)=横浜市戸塚区=は「今永選手のような速いボールをいつか投げたい」と目を輝かせていた。

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