点滴殺人の物証乏しく 大口病院、発生3カ月

 横浜市神奈川区の大口病院で入院患者2人が死亡した点滴連続殺人事件は23日、未解決のまま特別捜査本部設置から3カ月を迎える。捜査関係者によると、容疑者を絞り込むための決定的な物証が依然として乏しく、地道な捜査が続いている。一方、事件前に病院に関する情報提供が寄せられていた横浜市は対応を検証するため、第三者委員会の協議を11月末から開始。来年3月までに結果をまとめる。

 同病院では、9月18日に男性患者=当時(88)=が、同20日に男性患者=同(88)=が中毒死し、遺体からは殺菌作用が強い界面活性剤を検出。2人が入院していた4階のナースステーションには界面剤を含む消毒液「ヂアミトール」があった。

 特捜本部は、使用済みの注射器や点滴袋など大量の医療廃棄物を押収して鑑定を進めるとともに、院内事情に詳しい人物が投与前の点滴に注射器で消毒液を混入させた疑いがあるとみている。特捜本部によると、これまでに延べ4375人の捜査員を投入。看護師ら病院関係者延べ1071人から事情を聴いたという。

 一方、市には7〜8月に、「看護師のエプロンが切り裂かれた」「看護師が異物入りの飲み物を飲んだ」といったメール3件、電話1件が寄せられた。だが、市が事実確認したのは定期立ち入り検査をした9月2日だった。発覚後にも電話は3回あった。

 第三者委の委員らからは「なぜ警察に連絡しなかったのか」といった質問が挙がった。市は「院内の犯罪行為なら病院が通報すると思っていた。受け身だったのは事実」と説明。今後事件や医療事故の恐れがある情報であれば、速やかに医務監や課長ら幹部が対応を検討するなどの対策強化を考えているという。

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