神奈川県内10大ニュース〈2016〉

 政権を支える重要閣僚の現金授受問題で幕を開けた2016年。相模原障害者施設殺傷事件は社会を震撼(しんかん)させ、横浜の病院で起きた点滴連続殺人事件も捜査が続いている。一方で、プロ野球・横浜DeNAベイスターズは初のクライマックスシリーズ進出で沸かせてくれた。共生社会が根付く川崎・桜本のパワーはヘイトスピーチ解消法の成立に結びついた。今年も神奈川からたくさんのニュースが発信された。神奈川新聞社編集局が選んだ県内十大ニュースを紹介する。1位 相模原障害者施設 46人殺傷 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で7月26日、入所者が次々と刃物で刺され19人が死亡、職員も含め27人が負傷した。県警は同日、元職員の男(26)を逮捕した。男は事件前から、障害者の存在を否定する極めて独善的な考えを周囲に示していたことが判明。横浜地検は9月、約4カ月間の鑑定留置を開始した。戦後最悪とされる大量殺人事件は、障害者施設の在り方や措置入院の手続きなどさまざまな問題も突きつけた。2位 横浜の病院 点滴連続殺人 横浜市神奈川区の大口病院で9月、点滴を受けていた入院患者の男性(88)が死亡した。点滴や遺体から界面活性剤が検出され、県警は殺人事件と断定し特別捜査本部を設置。その後、別の男性患者(88)も中毒死だったことが判明した。未使用の点滴からも注射針で開けたような穴が見つかっている。事件前に院内のトラブル情報が市に寄せられており、市は第三者委員会を設置して対応を検証している。3位 ベイ、CS初進出 プロ野球の横浜DeNAベイスターズがレギュラーシーズン3位でクライマックスシリーズ(CS)に初進出。球界現役最年長の42歳だった「ハマの番長」三浦大輔投手の引退表明も力に連日熱戦を展開した。ファーストステージで2位巨人を下してファイナルステージにコマを進めたが、1位広島には惜敗。日本シリーズ進出の夢は来季に持ち越された。4位 日産、三菱自を傘下 日産自動車は5月、燃費不正問題に揺れる三菱自動車と資本業務提携することで基本合意。秋までに議決権ベースで34%の株式を取得し筆頭株主となった。三菱自は12月14日の臨時株主総会後の取締役会で、カルロス・ゴーン日産社長を会長とする新たな経営体制を発足させた。日産は提携をてこに海外での事業力強化を目指し、三菱自は日産傘下で経営再建を目指すことに。5位 参院選 与党3議席 7月10日の参院選で、改選4議席に12人が立候補した神奈川選挙区は自公の公認候補と自民推薦の無所属候補が当選し、与党が3議席を獲得して完勝した。野党は全国の改選1人区で共闘を進めたが、4人区の神奈川では民進が2人擁立に踏み切るなど各党の候補が乱立し、民進の1議席にとどまった。3期目を目指した民進県連代表の現職や、18年ぶりの議席獲得に挑戦した共産新人は涙をのんだ。6位 リオ五輪 県勢躍動 南米で初開催となったリオデジャネイロ五輪が8月に行われ、日本のメダル獲得数は前回ロンドン大会の38個を超えて史上最多の41個に。神奈川ゆかりのアスリートも6個のメダルを胸に帰国した。体操男子の白井健三選手は団体総合でアテネ大会以来3大会ぶりとなる優勝に大きく貢献。種目別跳馬では新技を見事に成功させて銅メダルに輝いた。7位 甘利氏が大臣辞任 週刊誌が報じた金銭授受問題の責任を取り、甘利明氏(衆院神奈川13区)が1月28日、経済再生担当相を辞任した。安倍首相の側近中の側近として政権を支えアベノミクスの司令塔役を務めたほか、TPP交渉の大筋合意に奔走した。会見で、大臣室と地元事務所で秘書が現金を受け取ったことを認め、監督責任に言及。辞任は「政治家としての矜持(きょうじ)に鑑みて決断した」と述べた。8位 ヘイト解消法成立 ヘイトスピーチ(差別扇動表現)解消法が5月に成立、6月に施行した。在日コリアンが多く暮らす川崎・桜本地区へのヘイトデモを阻止する動きもきっかけになった。法施行に先立ち川崎市はヘイトデモの公園使用を不許可。施行直後に中原区で計画されたデモも抗議に集まった市民に囲まれ中止になるなど、ヘイトスピーチを許さない機運が高まった。ネット上の差別表現を削除する動きも広がっている。9位 爆音訴訟 逆転敗訴 厚木基地の周辺住民が航空機の飛行差し止めと損害賠償を求めた厚木基地第4次爆音訴訟の上告審判決が12月8日あり、最高裁第1小法廷は「自衛隊機の運航には高度の公共性と公益性がある」として、一部飛行差し止めを命じた二審判決を破棄し住民側の逆転敗訴を言い渡した。将来分の賠償も認めなかった。米軍機の飛行差し止めについては一、二審に続き実質審理をしないまま退けた。10位 原発避難生徒へいじめ 東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒が、小学校で名前に菌を付けて呼ばれるなどのいじめを受けていたことが11月に明らかに。市教育委員会の第三者委員会は学校が指導を怠ったと指摘し「教育の放棄」などと批判した。市教委は年度内にも再発防止策をまとめる方針。避難生徒へのいじめ事例はその後、川崎市など全国各地で報告が相次いだ。

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