本場に負けぬ一流薬膳 世界大会で日本人初のトップ3 横浜の松本さん「21世紀の食医」に

 中国・北京で昨年末に開かれた薬膳料理大会で、料理人の松本淳さん(47)=横浜市旭区=が上位3人に選ばれた。日本人初の快挙で、「食べることで健康を保つ薬膳の良さを、多くの人に知ってもらいたい」と、“21世紀の食医”を志す。

 「中国薬膳養生料理コンテスト」は世界で最も権威ある薬膳料理大会と言われ、9回目を数える。個人戦は約70人が出場し、松本さんは前菜、主菜、デザートの全3部門で金賞に輝き、8人いる「全能特別金賞」を受賞。さらにその上位3人に選ばれた。「包丁技術や清潔さ、味、薬膳の処方で高評価され、本当にうれしい」と話す。

 料理の飾り付けは税関で規制されるため準備できないといった「外国人の悲哀」を味わった。それでも色鮮やかな野菜のテリーヌなどで注目度は高かった。

 松本さんは19歳で調理師専門学校を卒業し、横浜市内の老舗ホテルのフレンチレストランで腕を磨いた。24歳のときに慢性のへんとう炎になり、入退院を繰り返して半年ほど仕事ができない時期があった。

 フランスで修業後に帰国。パティシエなどを経て、2003年に日本大使館の公邸料理人として赴任したニカラグアで、人生を変える出来事があった。身体の不調を感じ、現地の日本人鍼灸(しんきゅう)師を訪れた際、治療に加え、一人一人の体調に合った茶を処方しているのを見た。へんとう炎を患ったときに知った「中医学、漢方、薬膳」に再びたどりつく。

 「日々の食事で病気を防げたり、体質を改善できるなら、料理人の私にとって天職」。約3年間の赴任を終えて、日本で薬膳師を目指した。

 料理人として働く傍ら、休日は薬膳の専門学校で勉強。数百種を超える漢方薬や食材それぞれにある効能などを学んだ。同時に自ら体質に合った食事を心掛けるようになった。「病院に行かなくなり、薬も服用しなくなった。効果を実感し、勉強のペースも加速した」という。

 12年に中国の「国際薬膳師」試験に、15年には「国際中医師」試験に合格。「本場でどこまで実力が通用するか試したかった」と挑んだのが今大会だった。

 普及にも力を入れる。昨年4月、母親の介護をきっかけにフリーの薬膳料理人となった。家庭向けの指導に軸足を置き、講座などを開く。コンセプトは「フレンチ薬膳」。一般に敷居の高いイメージがあるフレンチと薬膳の組み合わせが絶妙だ。「各自の体調に合わせた家庭で作れるおいしい薬膳料理を提案していきたい」と腕を鳴らす。

 問い合わせは松本さん電話080(4720)1368。

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