高炉3社、1.5ギガパスカル級高延性の超ハイテン開発にめど 自動車の軽量化を目的に超高張力鋼板の開発を目指す国家プロジェクトが順調

自動車の軽量化を目的に超高張力鋼板(超ハイテン)の開発を目指す国家プロジェクトが順調だ。プロジェクトに参画する高炉3社はそれぞれ、最終目標となる引張強度1・5ギガパスカル級、延性(伸び)20%の超ハイテン開発にめどを付けた。各社ともまだ実験室での試作段階のため実用化にはなお時間がかかるが、ハイテンの新しい領域を切り開く成果になる。

同プロジェクトは2013年度から10カ年計画の「革新的新構造材料等研究開発」。新構造材料技術研究組合(ISMA)に加盟する民間企業などが材料別に研究開発を進めている。

鉄鋼材料では超ハイテン開発が柱の一つ。目標は共通だが、研究開発は各社個別に進めている。最終年度は22年度だが、超ハイテン開発は研究開発が想定より順調に進んでおり17年度末までに5年前倒しで最終目標を達成する見通しとなった。

23日都内で3回目の成果報告会が開かれ、3社がそれぞれ研究成果を報告した。新日鉄住金は1・5ギガパスカルで延性15%の鋼板を実験室で試作することに成功。一方、JFEスチールは1・5ギガパスカル近い引張強度と延性19%超の冷延鋼板の試作に実験室で成功した。神戸製鋼所は引張強度1・5ギガパスカルで延性17%の鋼板を実験室で試作した。高炉3社とも最終目標に迫る成果を上げた形で、17年度末までの達成にめどを付けた。

超ハイテン開発では開発時期が早まることから、残りの期間では実用化に向け、強度と伸び以外の鋼板特性の高度化を進める。強度上昇に伴い鋼板に割れが生じやすくなる水素脆化や耐食性などをテーマに高炉3社が共同研究を行う見通しだ。

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