新日鉄住金は24日、ハット形鋼矢板が海外の公共工事に相次ぎ採用されたと発表した。シンガポールでは雨水幹線「ラッキーハイツウォータードレネッジ」の土留め壁向けに約1千トン納入。また、オーストラリアでは道路トンネル「オーバーンシティアクセスプロジェクト」の土留め壁向けに約2千トン納入した。
従来、海外では港湾、河川工事向けの採用が多かったが、急速・安定施工などのメリットから都市土木の公共工事での連続採用となった。同社では今回の受注を契機に、今後も東南アジアや中国・台湾を含む東アジア、オセアニアなどで積極的なPR活動を行い、受注拡大を図っていく方針。
シンガポールの案件は公益企業庁が発注。中堅施工業者のアベニューエンジニアリングにより建設が進められている。納入した鋼矢板には近接施工用鋼矢板「NS―SP―J」も含まれる。
一方、豪州の案件は南オーストラリア州政府交通インフラ計画庁が発注。大手ゼネコン、マッコーネルダウウェルによって建設が進められた。
ハット形鋼矢板は帽子(ハット)形状の大断面鋼矢板。幅900ミリと熱延鋼矢板としては世界最大の幅を有する。このため、U形鋼矢板やZ形鋼矢板に比べ打設回数を減らすことが可能。工期を短縮し、施工コストを半減できる。四つの断面形状を有するなど豊富なサイズも特長で、必要な断面性能に対して経済的な形状を選択することができる。
また、打設時の断面変形が少なく、高精度の施工を実現。シンガポールや豪州で適用される設計基準では鋼矢板の設計の際に継手効率の考慮が必要となるが、ハット形鋼矢板は断面性能低減が不要となり、壁構造の合理化が可能。
さらに、継手が左右非対称なため連続して一方向で打設できる。圧入工法やプレボーリング工法の採用により騒音や振動も少なく、都市部の狭い場所でも急速かつ安定した施工が可能だ。
新日鉄住金ではこれまで、インドネシアやフィリピン、ニュージーランドなどでハット形鋼矢板を展開してきた。シンガポールでは雨水幹線のニーズは高く、今後も継続的な需要が見込まれるという。同社ではこうした需要を捕捉するなど、アジア・大洋州などの海外建設市場で質の高いインフラ整備に貢献していく方針。