日鉄住金P&Eなど4社、北海道に水素製造供給施設 開所式開催、実証事業開始

「しおかい水素ファーム」の外観

新日鉄住金エンジニアリングの100%子会社、日鉄住金パイプライン&エンジニアリング(社長・浅井武氏、日鉄住金P&E)は24日、北海道河東郡鹿追町に家畜バイオマス由来の水素製造供給施設「しかおい水素ファーム」を建設し、同日開所式を行ったと発表した。エア・ウォーター、鹿島建設、日本エアープロダクツと共同で開設したもので、鹿追町と帯広市で家畜ふん尿由来水素を活用した水素サプライチェーンの実証事業を開始する。

実証事業は環境省が推進する「地域連携・低炭素水素技術実証事業」で採択されたもので、地域の再生可能エネルギーや未利用エネルギーを活用し、水素を精製、製造、貯蔵、輸送、供給、利用するという一貫した水素エネルギーのサプライチェーンを実証する。期間は15~19年度の最大5年間。

家畜バイオマスを活用

事業では、家畜ふん尿のメタン発酵施設である鹿追町環境保全センターからバイオガスの供給を受け、センター敷地内設置した水素の製造・供給施設「しかおい水素ファーム」で水素を製造する。製造した水素は、純水素型燃料電池用のエネルギーとしてセンター内で利用するほか、貯蓄用カードルで畜産農家や近隣施設に水素を運搬し、電気と温水を供給する。

水素製造設備の生産能力は毎時約70N立方メートル、水素出荷設備(カードル)の充填圧力は19・6メガパスカル。センター内には北海道初となる定置型水素ステーションを設置し、燃料電池自動車や燃料電池フォークリフトの燃料としても利用する。水素ステーションの圧縮機配管、熱交換器、蓄圧器ユニットには新日鉄住金が開発した高圧水素用ステンレス鋼「HRX19」を使用。特に蓄圧器ユニットは200カ所近くの溶接施工による安全性向上とコンパクト化を実現するなど画期的なステーションとなっている。

水素ステーションの圧力は燃料電池自動車用が70メガパスカル、燃料電池フォークリフト用が35メガパスカル。水素ファームの運営はエア・ウォーターが行う。今後も新日鉄住金グループは素材供給、エンジニアリングの観点からコンパクト化ステーションを提案し、水素社会の実現と普及に向けて貢献していく方針。

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