ハンセン病に理解訴え 中原で元患者・石山さん

 元ハンセン病患者で全国退所者原告団連絡会副会長の石山春平さん(80)=川崎市宮前区=の講演会が24日夜、市国際交流センター(同市中原区)で開かれた。ハンセン病患者の強制隔離を定めた「らい予防法」の廃止から20年。少年時代に受けた差別や偏見について語り、あらためて病気への理解を呼び掛けた。

  石山さんは小学6年生の時、ハンセン病と診断された。病院からの帰り道、父親に「人に言えない悪い病気になった。一緒に死のう」と言われた。石山さんは「病気のことを理解しておらず抵抗した。苦しかったのは病気そのものではなく社会的な制裁。強制収容されたら二度と帰れない状況だった」と振り返る。

 村の医師には「18歳以上は生きられない」と宣告された。自宅でみとりたいと父親が頼み、特例で自宅で暮らすことを許されたが、日中の外出は禁止に。昼間は納屋で過ごす生活が3年以上続いた。「友人もおらず、家族の中でも会話がなかった。ネズミやヘビが友達のように思えた」と石山さん。道を歩くと悲鳴を上げて逃げられ、石を投げられたこともあった。

 自殺も考えたが「療養所に行けば仲間がいる。死ぬ前に友達をつくって話がしたい」と思い直し、16歳で入院。迎えの看護師に「つらかったね」と抱きしめられたことが忘れられない。「優しい言葉を掛けてもらったことなどなく、わんわん泣いた」という。

 退所後は就職し、結婚して子どもも授かった。各地で講演活動を行っているが、いまだ周囲に打ち明けられない人も少なくない。石山さんは「正しく理解すれば、なんら怖い病気ではない。無知は偏見や差別を生む。周囲の人にも伝えていってほしい」と訴えた。

 講演会には150人が参加。横浜市中区の女性(59)は「ハンセン病患者の話を聞く機会は貴重。若い世代に伝えていけたら」と話した。

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