昨年12月の鉄鋼輸出、6%減の335万トン 国内向け増加で成約抑制

全鉄鋼輸出の推移

財務省が25日に発表した昨年12月の貿易統計(速報)によると、全鉄鋼ベースの輸出は前年同月比5・6%減の334万5千トンとなり、2カ月ぶりの前年割れだった。

新日鉄住金やJFEスチールといった日本の高炉大手は原料炭コストの急騰を受け、数量より採算をより重視した輸出方針を採っている。国内向けの需要が好調なこともあって輸出向けの玉も不足しており、一部で出荷時にトラブルがあったことも12月の輸出減に表れたようだ。

足元の鉄鋼輸出市場の環境自体は堅調で、韓国や中国、台湾勢も総じて輸出に慎重なことからタイト感が強い。市況も昨年の10月以降、上伸基調が強まっており、日本の高炉大手では熱延コイル輸出でトン当たりCFR500ドル半ばから後半での成約も見られている。足元では円高基調にあるものの、為替はなお1ドル=110円台とあって輸出採算の改善は着実に進んでいる状況だ。

ただ1~3月期は国内の需要期ということもあり、今後も鉄鋼輸出は増えにくそうだ。年初に発生した新日鉄住金・大分製鉄所の厚板ミル火災で、厚板の輸出量は減ることが予想される。2月に予定されていた大分の熱延ミル定期改修は順延されたものの、ホット輸出はもともと既存の成約分へ対応するので手一杯。鉄源自体が増えない中、輸出商談で寄せられる旺盛な引き合いに応え切れない情勢は続きそうだ。

地域別では、ASEAN向けが3・0%増の109万2千トンとなり5カ月連続、中国向けも17・0%増の48万5千トンで2カ月連続の増加となった。韓国や台湾などアジアNIEs向けは1・0%減の80万9千トンで5カ月連続の減少。米国向けは20・5%減の17万トン、中東向けは33・3%減の12万8千トンだった。

昨年12月の全鉄鋼輸入は2・2%増の68万2千トンとなり、3カ月連続で増加。うちアジアNIEsからは3・5%減の37万6千トンとなり3カ月ぶりに減少。中国からは11・4%減の13万2千トンで4カ月連続の前年割れとなった。

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