特定球団に突出した成績残した選手も…パ各球団の「キラー」を探る

単純な勝利数、通算の防御率や打率では見えないところに、対戦チームとの「相性」、対戦打者あるいは投手との「相性」というものがある。いつも打たれている、抑えられているような印象のある選手を見れば、チームは戦い方を見直すだろう。そこでここでは、昨季、特定のチームを相手に無類の強さを誇ったパ・リーグの「各球団キラー」を紹介していきたい。

西武のエルネスト・メヒア【写真:編集部】

王者・日ハム相手に活躍した投手&打者は…パ各球団の「キラー」を探る

 2016年シーズンは、北海道日本ハムがパ・リーグ制覇を果たし、そのまま日本一の頂まで駆け上がった。日本ハムの福岡ソフトバンクの対戦成績は、15勝9敗で貯金6。一方、埼玉西武との対戦成績は14勝11敗で貯金3と、ソフトバンクよりは苦戦を強いられた。「2016年のチーム同士の相性」という点に限定するなら、日本ハムはソフトバンクより西武をやや苦手にしていたということがうかがえる。

 単純な勝利数、通算の防御率や打率では見えないところに、対戦チームとの「相性」、対戦打者あるいは投手との「相性」というものがある。いつも打たれている、抑えられているような印象のある選手を見れば、チームは戦い方を見直すだろう。そこでここでは、昨季、特定のチームを相手に無類の強さを誇ったパ・リーグの「各球団キラー」を紹介していきたい。

【北海道日本ハムキラー】
・福岡ソフトバンク・和田投手
対戦成績:6試合4勝1敗 39回2/3、43奪三振 防御率3.63
・埼玉西武・メヒア選手
対戦成績:25試合91打数23安打7本塁打26打点 打率.253

 ソフトバンクの和田は防御率こそ3点台だが、昨季の日本ハムとの対決では、6試合に先発して4勝。8月19日には、優勝争いの天王山と言われた日本ハムとの3連戦の初戦に先発し、8回無失点の圧巻の投球で勝利を収めた。しかし、肘の違和感でポストシーズンは登板を回避。たらればの話にはなるが、もしも和田が万全の状態だったなら、日本ハムはポストシーズンでの直接対決で、さらなる苦戦を強いられていたかもしれない。

 西武のメヒアは、昨季、日本ハムのレアードに次いでパ・リーグ2位となる35本塁打をマーク。日本ハム、オリックス、ソフトバンクの3チームに対してそれぞれ7本塁打を放ち、日本ハム戦ではシーズン103打点中、26打点を挙げている。つまり全体の約4分の1を、北海道日本ハムから稼いだことになる。

 なお、5打数以上対戦した北海道日本ハムの投手6人の中で、メヒア選手が最も得意としたのは大谷選手で、9打数4安打、本塁打1本、打率.444である。

楽天&西武に対して活躍した選手は…

【楽天キラー】
・福岡ソフトバンク・武田投手
対戦成績:6試合4勝0敗 44回1/3、37奪三振 防御率1.02
・千葉ロッテ・鈴木選手
対戦成績:25試合89打数30安打3本塁打25打点 打率.337
・北海道日本ハム・中田選手
対戦成績:25試合104打数29安打8本塁打30打点 打率.279

 ソフトバンクの武田は昨季、楽天に対して4勝無敗。初先発となった3月27日にいきなり9回無失点に抑えると、7月26日にも完封勝利を挙げ、自身2年連続となる2桁勝利を達成。4勝全てが7回1失点以下であり、勝敗がつかなかった試合を含んでも、防御率は1.02、自責点は5である。2015年も楽天戦では強みを発揮していたが、今季からは楽天側もさらなる武田対策を講じてくることだろう。

 ロッテの鈴木、日本ハムの中田は、楽天戦で30打点前後を挙げている。特に鈴木は、楽天以外のパ・リーグの4球団から稼いだ打点はそれぞれ10打点に満たないため、楽天に対する勝負強さは突出していることが分かる。最も得意としていたのは則本で、6打数4安打、打率.667。本塁打も1本放っている。

【埼玉西武キラー】
・オリックス・ディクソン投手
対戦成績:6試合4勝0敗 41回、35奪三振 防御率2.41
・楽天・銀次選手
対戦成績:23試合78打数28安打0本塁打14打点 打率.359

 オリックスのディクソンは、昨季の西武戦で6試合登板、4勝無敗。パ・リーグの対戦チーム別の防御率は、対ロッテの2.39が最も低いが、勝敗を見てみると5試合登板で2勝1敗。西武との相性の良さが味方の援護を呼んだ形となった。

 昨季、楽天の銀次が苦手としたチームはソフトバンク。対戦打率は.225で、千賀、中田、和田、バンデンハークら相手には、打率2割を切ってしまっている。ただ、西武戦では、菊池、牧田、高橋光、岸(現・楽天)などの主力の投手相手に打率3割以上をマークし、14打点を挙げる活躍を見せた。

ロッテ&オリックスに対して活躍した選手は…

【千葉ロッテキラー】
・オリックス・金子千尋投手
対戦成績:5試合2勝0敗 36回、26奪三振 防御率1.75
・福岡ソフトバンク・柳田選手
対戦成績:22試合82打数30安打5本塁打21打点 打率.366

 オリックスの金子千尋は、ロッテを相手に2勝無敗。日本ハムとロッテ相手には防御率1点台、反対に西武相手には防御率6点台と、相性の良し悪しが数字に顕著に表れた。ロッテとは勝敗がつかなかった3試合においても、全て7回3失点以内に抑えており、ロッテに対して効果的な投球を熟知しているのだろう。

 ソフトバンクの柳田は、ロッテを相手に打率、打点、本塁打数、安打数の全てで最も優れた成績を挙げている。しかし、同じロッテでも、涌井に対して21打数6安打、打率.286と結果を残している一方で、石川には13打数2安打、打率.154と抑え込まれている。ただその2安打は本塁打であるため、しっかり打点は挙げているとも言える。今季からの2人の対決の行方は、単純な数字では予想できなさそうだ。

【オリックスキラー】
・福岡ソフトバンク・バンデンハーク投手
対戦成績:4試合4勝0敗 25回、24奪三振 防御率3.24
・北海道日本ハム・レアード選手
対戦成績:25試合93打数25安打6本塁打22打点 打率.269

 ソフトバンクのバンデンハークは、防御率こそ3点台だが、オリックス相手に先発した全ての試合で見事勝利を収めている。日本ハムキラーである和田の成績からもうかがえたが、バンデンハークも、3失点以内に抑えて試合の流れを引き寄せ、打線の奮起を促して勝ちを手繰り寄せる技術に長けているのだろう。

 日本ハムのレアードは、昨季のパ・リーグ本塁打王。最も多く本塁打を放ったのは楽天戦の10本だが、最も多くの打点を挙げたのがオリックス戦である。特に、ディクソンとの対戦では、12打数7安打2本塁打、打率.583と、ずば抜けて相性が良い。

ソフトバンクに対して活躍した選手は…

【福岡ソフトバンクキラー】
・北海道日本ハム・高梨投手
対戦成績:8試合3勝0敗 29回、22奪三振 防御率1.86
・オリックス・西投手
対戦成績:7試合4勝2敗 48回、29奪三振 防御率2.06
・北海道日本ハム・大谷選手
対戦成績:21試合73打数30安打9本塁打16打点 打率.411

 昨季パ・リーグ新人王に輝いた日本ハムの高梨は、中継ぎとしてソフトバンク戦4試合に登板。大谷が先発した4月1日の試合では、チームがサヨナラ勝利を収め、勝利投手に。その後も安定して結果を残し、シーズンの中盤から先発に配置転換されたが、その後も効率的に2勝を挙げた。

 オリックスの西は、2013年ごろから西武戦を苦手としている傾向があり、昨季も2試合10回1/3を投げて防御率8.71。しかし、最も多く登板したソフトバンク戦では7試合48回を投げて防御率2.06と優秀な成績を残した。西は、2012年にソフトバンクの強力打線を相手に無安打投球を達成しており、相性が良い相手であると言えるだろう。

 日本ハムの大谷は昨季、投手としてもソフトバンク戦で4試合に先発し、2勝無敗の成績。日本最速となる165キロを叩き出した10月16日のCSファイナルステージ第5戦での快投は記憶に新しい。しかし大谷は、投手としての活躍以上に打者としてソフトバンクの脅威となった。5打数以上対戦したソフトバンクの投手7人の中で、大谷を打率.250以下に抑え込んだのは、バンデンハークただ一人だけだ。放った本塁打は9本、打率は驚異の.411。「パ・リーグ制覇のために、ソフトバンクとの直接対決だけは落とせない」という、大谷選手の明確な意志がうかがえるような数字である。

 以上、昨季のパ・リーグの「各球団キラー」を紹介した。キラーというだけあって、当然特定のチームを得意としている選手たちを挙げたが、その選手たち自身にも、苦手な球団、相性の悪い相手というものが存在している、ということも見えてきた。もちろん、どのチームを相手にしても、安定した成績を残せてこそ一流選手だという意見もあるだろう。しかしたとえ相性の悪いチームがあっても、そのぶん、相性の良いチームから勝ちを取りこぼさず、結果を残す。それも、一流だからこそできることだ。

「相性」というのは不思議なものだ。「その打者または投手を相手にすると、調子が良くてもどうにも打たれる。抑えられる。タイミングが合わない。似たようなタイプで、成績も拮抗している別の選手を相手にしても、そこまで反撃を封じられることはないのに」。そういう感覚を、まさに「相性」というのだろう。順位は関係なく、特定の相手チームに極端な強さを発揮し、対戦チームごとの成績の差が大きく開く原因というものは、突き詰めれば技術的な問題ですらないのかもしれない。

 しかし、プロはたった1年でそれを克服してみせることもあるし、逆に克服させまいと、さらなる研鑽を積むこともできる。今回紹介したのは、あくまでも「2016年のチーム同士の相性」、つまり「過去の各球団キラー」である。今季からは、これらのデータをもとにした新たな展開が望めるだろう。昨季とはどのような選手間の意識の変化、数字の変化が見られるのか、新入団選手の台頭も含めて、楽しみに待ちたい。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」編集部●文

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