フジクラの高温超電導線材、通電特性と生産性2倍に NEDOプロジェクトで推進

フジクラは2018年度をめどに、高温超電導線材の通電特性と生産性を現行の2倍に高めることを目指す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が委託・助成するプロジェクトの中で取り組む。プロジェクトは医療機器のMRIなどに用いる超電導コイルの小型・高性能化や製造コストの低減などが目的。同社ではコイルに使う超電導線材の特性を高めるため、添加成分などを工夫する開発に取り組む。

高温超電導線材は液体窒素温度で電気抵抗がゼロになる。同社では高磁場の下でも超電導状態を保てるイットリウム系の高温超電導線材を製造。MRIのキー部品で強磁場を発生させる超電導コイルは、現在液体ヘリウムで極低温に冷却する金属系の超電導線材が用いられている。イットリウム系線材を用いることで供給リスクのあるヘリウムの使用を避けつつ、コイルの小型・高性能化が可能になる。

通電特性や高磁場特性の改善についてはNEDOの委託で産業技術総合研究所と共同で取り組む。通電特性については、線材の断面積1平方ミリメートル当たり400アンペア以上の電流への対応を目指す。400アンペアは現行の数値の約2倍。

生産性向上については、フジクラ1社で採択されたNEDOの助成事業として実施。1時間当たりの生産量を50メートル以上に倍増させる。

通電特性・生産性ともに線材に添加する成分の工夫などで改善。電流特性を低下させる磁束の運動を抑えるため「人工ピン」と呼ばれる非超電導体の微細粒子を超電導層中に均等に分散させているが、同社では今後その種類や量などを調整。電流特性を高めつつ、長尺品を安定して製造できる技術の確立を目指す。

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