【トップインタビュー 日新製鋼建材・中尾卓社長】新GLカラー鋼板需要創出の武器に 生産効率向上へ東西の成形機を増強・集約

日新製鋼建材・中尾卓社長

――昨春の会社設立からこれまでの総括を。

「発足披露式典の席上で、セリオス宣言として新会社が重点的に取り組む4項目を表明した。まず受注後1カ月以内に届ける納期対応については、市場から高い評価を頂き、新たな受注先を獲得するなど目覚しい効果を上げている。第二に毎年3点以上出すと申し上げた新製品については、金属サイディング製品で新たに4種をラインナップし、3種をモデルチェンジするなど計7種を市場投入した。毎年5社以上進めるとしたユーザー開拓は、特約店組織『セリオス会』への還元という観点では道半ばにあり、クレームに対する1カ月以内のアクションは改善の余地を残す」

――新旧組織はどう融合しているのか。

「現在の本社製造所において、同じ敷地内で操業する日新製鋼の旧市川製造所と旧日新総合建材の鋼板加工工場、建材工場、あるいは外壁材や成形品に代表される、拠点や品種などの垣根を越え、従来の所属先に囚われることなく、技術的な話をはじめ相互に声を掛け合う場面が見受けられる。営業部門では各地で自主的に製品や工法の勉強会を開き、従来の担当分野で培った知見を共有していこうという流れが自然と生まれている」

――事業環境はどうか。

「太陽光発電向けが苦戦するものの、これを除けば堅調な非住宅や集合住宅向けのファインスチールを中心に全体で前年を10%程度超える販売水準で推移している。特にここ数カ月は屋根やサイディングといった外装建材向けの引き合いも旺盛で、主力とする建材全般は来年にかけて需要が回復してくるだろう。他方、鉄鋼原料の高騰で原料コイルの調達コストが膨らんでいるのに伴い、出荷ベースで外装建材のカラー鋼板とガルバリウム鋼板の製品価格について、昨年7月の帳破明けから従来比1万円、今年1月から1万円の値上げを実施している。数量確保を優先する需要家もあり、一時に比べ市況も相当上がってきている」

――来年度以降は。

「2017年を起点に東京五輪・パラリンピックの開催をはさみ、市場環境が良好との見方が一般的な20年までと、その後の23年にかけての向こう7年を対象とする中期経営計画に相当する事業戦略ビジョンを策定した。先々需要量が落ちても利益を出すため、どう新たな需要を創出し、利益を出せる商品を世に送りだしていくのか。市場動向に左右されず、一定の利益率を確保できる体制を構築していかなければならない。屋根・サイディング需要の新規創出やZEHに見合った建材製品づくりは有望な選択肢の一つに上がる」

――事業強化に設備投資も欠かせない。

「サイディングの生産ライン更新や本社製造所のカラーラインの増強などを構想する。東西で26ある成形ラインも一部を新しい設備に集約し、最新鋭のラインを増強するなど生産効率を高める検討に着手し始めている。20年以降を見据え、今後数年では例年を大幅に上回る投資を見込んでいる。中途採用を含めて営業を増員し、新需要の開発に取り組むほか、海外市場も探索していきたい」

――新たな需要創出の具現化として、新GLカラー鋼板「セリオス・プライム」の開発は意義深い。

「汎用ポリエステル樹脂で業界初となる変退色15年保証を可能にし、穴あき25年保証に対応する業界最高水準の製品として営業部隊の士気も高い。他素材から金属建材製品への切り替えに伴う潜在需要の掘り起こしにも商機を見出せ、合わせて開発に成功したクロメートフリー処理商品も物件単位で適応する。セリオス・プライムの拡販を通じて金属外装材向け鋼板の市場占有率を高めていくとともに、この特性を生かして他素材からファインスチールに切り替えていく大きな武器としたい。今後は日新製鋼の子会社であると同時に、新日鉄住金グループの一員として、我が社でなければいけない存在感を出しながら両グループの利益の最大化に努めていく」(中野 裕介)

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