海難救助の実相に迫る 事例記した書籍出版

 特に高度な知識・技術を必要とする海難に対応するため、全国1万3千余りの海上保安官から選ばれた精鋭36人による海上保安庁の特殊救難隊。現職やOBらの証言で出動事例や過酷な訓練の実相に迫る書籍が、第3管区海上保安本部(横浜)の協力で出版された。

 同隊は1974年11月、東京湾で発生した液化天然ガス(LPG)タンカーと貨物船との衝突・火災海難をきっかけに、翌年に隊員5人体制でスタート。羽田空港沖の日航機墜落事故や潜水艦「なだしお」と釣り船の衝突事故など、これまでの出動件数は5千件近くに及ぶ。

 同隊OBで3管の宮野直昭本部長は、転覆沈没した貨物船の真っ暗な機関室で潜水中に命綱を手放してしまい、身動きが取れなくなった経験を披露。待機中の潜水士が照らす水中ライトが見えたことで脱出できた。「この時のミスほど訓練の重要性を認識したことはない」と記している。

 「海難救助のプロフェッショナル 海上保安庁 特殊救難隊」(成山堂書店)はA4判224ページ。2千円(税別)。主要書店で取り扱っている。問い合わせは、成山堂書店電話03(3357)5861。

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