父直伝の“かまぼこ板トレ”!? 西武大石が剛速球復活へ行った珍練習とは

2010年のドラフト1位で埼玉西武に入団した大石達也投手。ここまで苦しいシーズンが続いていたが、昨シーズンはキャリアで2番目に多い36試合に登板し、失点6、防御率1.71と安定した成績を残した。「今シーズンが勝負」と話す28歳はオフの自主トレで元チームメイトから大きな刺激を受けた様子。また、父親から教わったユニークな練習メニューも久しぶりにこなしてきたという。「勝負」のプロ7年目に向けて、どのような準備を積んできたのか――。大石に話を聞いた。

西武・大石達也【写真: 篠崎有理枝】

早大トリオから受けた刺激、西武ドラ1右腕が見据える7年目の飛躍

 2010年のドラフト1位で埼玉西武に入団した大石達也投手。ここまで苦しいシーズンが続いていたが、昨シーズンはキャリアで2番目に多い36試合に登板し、失点6、防御率1.71と安定した成績を残した。「今シーズンが勝負」と話す28歳はオフの自主トレで元チームメイトから大きな刺激を受けた様子。また、父親から教わったユニークな練習メニューも久しぶりにこなしてきたという。「勝負」のプロ7年目に向けて、どのような準備を積んできたのか――。大石に話を聞いた。

 今オフは早大時代に3本柱としてともに黄金期を築いた福井優也投手(広島)、斎藤佑樹投手(日本ハム)それぞれと自主トレを行ったという。

 福井とは毎年、自主トレを実施している。早大時代のチームメイトは昨季、所属する広島でリーグ優勝を経験したが、自身は13試合に登板して5勝4敗と成績を伸ばせなかった。それでも大石は福井について今年は調子がいいと見ているようだ。

「肩の仕上がりは順調です。キャッチボールをしていれば、それもわかります。『自分も、もっと上げていかないと』と思いましたね」

斎藤と誓い合った飛躍、「今季はやらないとな」

 斎藤とは昨年12月に沖縄でトレーニングを行った。斎藤もチーム自体はリーグV、さらには日本一と飛躍したが、自身は11試合の登板で0勝1敗、防御率4.56と苦しんだ。オフには背番号変更を自ら申し出るなど、厳しい状況が続いている。

「『今季はやらないとな』と2人で話していました。あいつもすごい頑張っていました」

 そう振り返る大石は早大トリオとしてともに活躍した元チームメイトに大きな刺激を受けたようだ。

 自身も早大時代は、躍動感のあるフォームから155キロ超の速球を投げ込む剛腕で鳴らし、圧巻の投球を見せていた。「大学時代は簡単にやっていました。追い込むまで、ざっくり真ん中近辺に真っ直ぐを投げておいて、あとは際どいところを狙うか、フォークを投げるかだけでした」。

 ただ、プロ入り後は思うような投球ができなくなった。自身はフォームの問題だと考え、改善に努めてきた。

「140キロ後半から150キロいくように」―

「フォームの安定には、ずっと取り組んできました。だいぶいい感じにはなってきたので、投げ込んで、自分のものにできればと思います。それを継続させて、成長できればと思っています」

 14年、15年合わせて3登板と苦しんだが、昨季は36試合に登板。12年以来のプロ2勝目を挙げるなど、復調の兆しを見せた。大石自身も昨年がプロに入って一番良かったシーズンだと感じている。ただ、投球内容には納得していないようだ。

「まだ、自信にはなっていない。球速が、出ても140ちょっとなので。140キロ後半から150キロいくように、もっとスピードボールを投げられるようになりたいですね」

 オフの自主トレでは、例年と変わらず走り込みとウエイトトレーニングを中心に行った。変化球の精度に関してはキャンプで取り組む予定だが、自主トレ中はボールのキレを増すために、かまぼこ板を使ってトレーニングをしたという。

黙々と投げ続けた「かまぼこ板」、「変な回転だとすぐ落ちてしまう」

「ちゃんとしたきれいな回転じゃないと、(板が)まっすぐいかないんです。変な回転だとすぐ落ちてしまいます。かまぼこを食べて、板を洗って、1人で投げては拾ってを繰り返していました」

 この珍しいトレーニング方法は、社会人野球の九州産交(1988年休部)で投手として活躍した父に、子どもの頃に勧められたものだという。「中学生くらいの時に、親父に『やってみろ』って言われたんです。久しぶりに、ふと『やってみようかな』って、思いました」。プロ野球選手を目指していた子どものころの練習方法。原点に立ち返ろうという思いもあったのか、プロ7年目のシーズンを前に、再び「かまぼこ板」を一人で黙々と投げ続けたという。

 近年は右肩痛に苦しみ、思うような投球ができないシーズンが続いたが、昨季ようやく肩への不安を解消できた。「今シーズン活躍できて、やっと『プロ野球選手』らしくなれると思います。今までは、全然投げてないですから」。右腕は昨季の成績によって少なからず手応えを得た様子だ。

 元チームメイトから受けた刺激と、父から教わった懐かしい練習法。復活への兆しを見せ始めた28歳がオフの経験を経て、今季どのような飛躍を遂げるのか。大石自身が思い描く「プロ野球選手」らしい輝きを見せてくれる日が、待ち遠しい。

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki

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