勝負を懸ける8年目、未完の大器、広島・堂林翔太が目指す新境地とは

夕暮れの中で、懸命にボールを追っていた。広島がキャンプを張る日南市。1軍が居を構える天福球場から車で15分ほど離れたところにある東光寺球場に、彼の姿はあった。キャンプ3日目。2軍がキャンプを開始する7日まで使用可能なこの地で、外野手の特守に汗を流していた。

広島・堂林翔太【写真:荒川祐史】

高校時代はエースで4番で甲子園制覇、鳴り物入りで入団も…

 夕暮れの中で、懸命にボールを追っていた。広島がキャンプを張る日南市。1軍が居を構える天福球場から車で15分ほど離れたところにある東光寺球場に、彼の姿はあった。キャンプ3日目。2軍がキャンプを開始する7日まで使用可能なこの地で、外野手の特守に汗を流していた。

 堂林翔太、25歳。中京大中高時代にエースで4番として母校を全国制覇に導き、鳴り物入りで広島に入団。将来のスター候補として期待されてきた男だが、はや8年目。背水の覚悟で、2017年シーズンのスタートを切った。

 元来、内野手が本職の堂林だが、昨秋、首脳陣の方針もあって、外野手へコンバートされることになった。14年に47試合で守ったことはあるものの、15、16年は経験なし。「まだまだ素人なんで、日々前進していく、上手くなっていければいいかなと思います」と、外野手としての力をつけるために、キャンプでは必死に打球を追いかけている。

 プロ3年目の12年に144試合に出場した。488打数118安打、打率.242、14本塁打、45打点をマーク。一気にレギュラー定着、球界を代表する打者への飛躍を期待されたが、そこから成績は下降線を描いた。昨季は47試合出場。60打数14安打は、双方とも12年以降で最少の数字だった。

狙うはスタメン出場、最良の道として選んだ外野手転向

 遊撃手には、WBCの侍ジャパンメンバーとなった田中広輔が定着。三塁手には安部友裕、2年目の西川龍馬がおり、キャンプイン翌日の2日には、三塁、遊撃、二塁をこなせるメキシコ人のラミロ・ペーニャの加入も決まった。一塁も新井貴浩、ブラッド・エルドレッドがおり、内野手での定位置取りは厳しいと言わざるを得ない。

「こだわっている場合ではない」

 外野手も中堅の丸佳浩、右翼の鈴木誠也はアクシデントがない限り確定だろう。左翼もエルドレッド、松山竜平らとの競争となるが、それでも、自らが生きていく、スタメンの座を奪うには、外野手が最良の道であると、自覚している。

「まず打つことをしっかりしないと、試合には出られない。とは言っても、守備がおろそかでは、試合には出られない」

 ファンが期待し続け、7年が経った。背番号7がマツダスタジアムで輝く日を。堂林翔太は、新境地に飛躍のチャンスを賭ける。

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani

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