【創業159年の山中産業】〈山中直理社長に経営戦略を聞く〉「関東圏の営業強化」 従業員の生活安定、会社存続が使命

中山産業・中山社長

山中産業(本社・大阪市、社長・山中直理氏)は1858(安政5)年創業の非鉄金属商社だが、化学品製造、防蝕金属製造、外食産業など多彩に事業を展開している。従業員(正社員)は117人。関連会社は国内に2社、海外は中国に2社を持つ。山中社長は「この2月25日で創業159年を迎える。長年の日々の業務の積み重ねが、当社の信用につながっている。決して華々しい企業ではないが、多事業展開を強みに、業容拡充に努めたい」と話す。同社の歩みや現状、課題とそれへの対処などについて、山中社長に話を聞いた。(白木 毅俊)

――銅地金商として創業した後、1917(大正6)年には大阪市内の山中製錬所で銅・アンチモンを製錬、ロンドン金物取引所(現LME)にも登録された。

「地金は創業当時から延々と続く当社の本業だ。ベースメタルからレアメタルまで扱っている。地金の仕事はあまりもうからないのだが、創業からの仕事と現在収益のある仕事は、当社事業の両輪と考えている」

――足元の課題と、その対処方法は?

「流通としてヒット商品を追いかけていきたい気持ちはあるが、そういう大ヒット商品はなかなかない。当社に限らず、同業の他社さんもそうだと思う。今、需要増が見込めるのは東京五輪絡みの関東圏。その需要を積極的に取り込むため、関東での営業強化を既に進めている。昨年9月、大阪本社から東京支店へ営業職4人を異動させ、関東に重点的に配置した。市場で仕事が増えてから人を投入しても遅いため、いち早く手を打った。スーパーゼネコンの関東圏での計画は膨大なものがある。関東圏での開発案件は、20年以降にもずれ込む」

――業績は?

「前期(16年2月期)業績は売上高152億円で、経常利益が1億1300万円だった。今期(17年2月期)業績は売上高139億円、経常利益1億3千万円を見込んでいる。ここ数年間での最高売上高は15年2月期の169億円だが、それはサイン関連の需要増に伴うもの。売上高は相場で上下するし、あまりこだわりはない。売上高別比率は地金30%、化学品13%、加工品40%、建材・工事8%、フード9%。建材・工事はこの数年で、2~3割伸びるだろう。加工品は好調で、地金も堅調だ。化学品は樹脂添加剤が主体で、大きな変化はない。添加剤は絶対必要だが保守的な市場であり、関係する各社ともにリスクを嫌う。次期(18年2月期)業績は売上高148億円、経常利益が1億5千万円を見込む」

――国内外の関連会社4社の動向は?

「アルミインパクトチューブ・ラミネートチューブ製造の関西チューブは業績好調で年商24億7千万円(16年3月期)、鉄道の分岐器製造の関東分岐器も業績は堅調で年商が18億8千万円(16年5月期)。海外は中国に三酸化アンチモン製造の広東三国テイ業と、広州山中貿易を持つ」

――関東でのフード事業は?

「現在、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)が12店、カプリチョーザとストーンバーグが各1店。この3月に13店舗目となるKFC錦糸町店を出店する。地金の159年には及ばないが、フード事業は1972年から約45年手掛けており、副業ではなくあくまでも本業の一つ。人と設備の投資を怠らないことが、KFC本部からも高く評価されている」

――M&A(企業合併・買収)などは?

「直近で案件は無いが、業容の充実と安定の手段として考えたい。今は自動車と建築が産業を支えているが、市場の劇的な変化がいずれ起こる。拡大路線はリスクにもなりかねない。『従業員の生活の安定と将来的な安心、会社の存続』という2点が私に課せられた使命だと感じている」

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