地元・沖縄で得る自信 DeNA人的補償の平良

【カナロコスポーツ=佐藤 将人】横浜DeNAの春季キャンプ第4クール3日目は19日、浦添市民球場でヤクルトと練習試合を行い、4−3で勝利した。先発はフリーエージェント(FA)で巨人に移籍した昨季のエース山口俊の人的補償として加入したプロ4年目の平良拳太郎。初回に1点を失ったが二回以降の3イニングは1安打に封じ、無四死球で4回3安打1失点と結果を残した。ラミレス監督からは次回の先発も約束された。3年で1軍登板1試合のみの右腕が、先発ローテーション入りに近づいている。  打者を圧倒する球はない。とらえられそうで、いつの間にかアウトカウントを増やしているタイプだ。「自分のような投げ方の投手は珍しいので、目指す人も特にいない。ただ打たせて捕るスタイルなので、テンポの良い投手を参考にしている」。スリークオーターともサイドハンドも言えない微妙な位置から腕を振り、左右に逃げる球を散らす。時にインサイドに直球を投げ込み、的を絞りにくくさせていく。

 対外試合2戦目で初先発となったこの日。ヤクルト先頭の山田に右中間を破られ、三塁打を許した。打たれたのは外角高めに浮いた直球だ。「最初は球が高くて、山田さんに軽く打たれてしまった」。上田の遊ゴロの間にあっさりと1点を献上。流れを切りたかったが、続く坂口にも高めの真っすぐを中前に運ばれた。嫌な予感がした。

 ここで修正できたのが大きかった。4番バレンティンにはファウルで粘られフルカウントとなったが、最後は低めの変化球で三振に。以降、降板した四回までに許した塁は単打の一つだけ。「球が高いと自分でも気づいたので、低めに集めようと。その中でも外角ばかりになってはだめなので、内角を使って直球だけじゃなくシュートも投げられてよかった」。三、四回に計4短長打で味方が3点を奪ったのも、守備のリズムが好循環を呼んだと言えるはずだ。

 これで13日の阪神戦と合わせて7回を投げ6安打1失点。歩かせたのは死球が一つのみと、内外角を広く使いながら四死球が少ないのも好印象だ。ラミレス監督も「初回に失点したが、その後は落ち着いた良い投球をして46球でまとめた。色んな球を混ぜながら低めに集めて、打者のバランスを崩していた」と高評価を与える。

 巨人時代3年間で1軍登板は昨季の1度のみ。それも3回2/3を投げ4失点で敗戦投手になっている。人的補償による移籍に際し、高田繁GMは「(巨人)2軍での成績も良く、オフには海外のウインターリーグに派遣され期待をかけられていたのがわかる。1年目から結果を出せる投手として選んだ」と語った。当人も目標として「1年目からローテ−ション入り」を掲げていた。ただ実際のところ、1軍でどこまで投げられるかは未知数だったはず。淡かったはずの期待は日に日に濃くなっている。

 好投を受け、ラミレス監督は試合後に「もう一度、先発のチャンスをすぐに与える」と明言した。投手が腕を振るために欠かせない、自分の球は通じるんだという自信。キャンプ、練習試合という試用期間で、指揮官はその見えない力を植え付けようとしている。21歳の若手にとって、その舞台が生まれ故郷の沖縄であるということは、これまた幸運だろう。

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