トヨタと高炉大手、下期ヒモ付き交渉決着 支給価格4月から値上げ、薄板・鋼管など1万4000円

中部地区の部品メーカー筋や取り扱い筋によると、トヨタ自動車が4月から(2017年度上期)の鋼材支給価格(集購価格とも言う。部品査定価格などに用いられる鋼材単価)について薄板・鋼管などトン1万4千円値上げすることが明らかになった。値上げは13年度下期以来、3年半ぶり。昨年は4月からトン3千円値下げし、10月以降も据え置いた格好になっていた。

トヨタ自動車など自動車メーカーと高炉メーカーとの鋼材ヒモ付き価格交渉は、個別交渉のため詳細は明らかではないが、すでに16年度下期(10~3月)分について支給価格の改定幅に近い値上げで決着したとみられる。トヨタはそれを受け、集中購買で使う支給価格の改定を決めた。

自動車向けのヒモ付き鋼材価格は、原料価格が4半期変動制に移行してから、原料価格や為替を織り込んだフォーミュラに沿って決まる要素が強くなっている。前提となる為替レートをいくらにするかによって、原料コストの円建て評価額が変わる仕組みだ。

今回対象となった16年度下期は、10~12月期と1~3月期で為替が大きく変動。また16年度は上期もブレグジット(英国のEU離脱)などをきっかけに為替が大きく振れた。1年の中で為替レートが短期間に大きく変動したことから、鉄鋼メーカーと自動車メーカーの間で行われる個別交渉の価格改定幅は、値上げ幅にばらつきが出ることもありそうだ。

鋼材流通「市況にプラス」

商社やコイルセンター、特約店など鋼材流通業者の間では「今回の支給価格改定は、鋼材市況にプラス。特に薄板は供給タイト感が強く、鋼材価格上昇の後押し材料になる」といった声や「店売り分野の荷動きが盛り上がらず、ユーザーの値上げ理解も一気には進まない中で慎重なムードとなっていたが、価格レベルが大きく変わることが再確認される契機となる」との指摘が聞かれる。

海外市況に比べて国内市況の上昇が遅れている中で、今回の値上げが市況上昇を後押しする、との受け止めが支配的だ。

支給価格が値上げになることは確実とみられていたが、半年の時期ずれという支給価格の構造問題や足元の原料炭スポット価格下落などの要因もあり「改定幅がどれくらいになるのか」が注目点だった。

自動車メーカーにとって支給価格引き上げはコスト増になるため、ヒモ付き交渉とは別に決まる「支給価格」の上昇幅はかなり抑えた格好で決まると予想した鋼材流通業者も少なくなかった。

ただ高炉メーカーが陥没是正分も含めて累計でトン2万円程度の値上げを打ち出していること、さらには過去からの枠組みの継続性を保つ意味からも、大幅な改定額になるとの見方が根強くあった。

16年度初めには鉄鋼メーカー側も想定していなかった昨夏からの原料炭コスト急騰は、自動車メーカーなどユーザーにとっても負担は小さくない。年初見通しより為替が円安に振れたことで「自動車側に吸収余地はある」(関係筋)との指摘も聞かれるが「予算が決まった後の、年度の期中で、鉄を含めた資材調達額見通しがこれほどぶれるのは異例」(自動車筋)とも言える。

足元の為替レベルを基に計算すると、今回の支給価格改定幅では十分ではないとの分析も成り立ち、また、10~12月でトン1万円、1~3月で累計2万円相当の値上げ方針を打ち出した中で、需給ひっ迫感が強い薄板などがその平均値(1万5千円)をやや下回るわけだが、近年にない大幅改定となったのも事実。今後、より市況性が強く、価格変動幅が大きい店売り分野において、市況上昇幅がどれほどになるのかが注目される。

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