【工場ルポ】〈表面処理鋼板、ロールなど製造する淀川製鋼所・大阪工場〉多目的塗装ラインでニーズ対応 高品質ロールへの品質改良に注力

3コート3ベーク方式のカラーライン

淀川製鋼所(本社・大阪市、社長・河本隆明氏)は、大阪(大阪市)、呉(広島県呉市)、市川(千葉県市川市)、泉大津(大阪府泉大津市)、福井(福井県坂井市)の5工場を生産拠点に持つ。表面処理鋼板、ロール、エクステリア・建材商品を製造する大阪工場を訪ねた。(綾部 翔悟)

同社は、1935年(昭和10)に鋼板と鋼材製造のために、淀川に面した現在の大阪工場の地に設立された。当初の敷地面積は現在の約3分の1だった。その後、本社機能は移転され、大阪工場として現在の地で、塗装鋼板の製造とともにエクステリア商品や建材商品の製造など、同社の新事業を担う形で設備の増強や増築を重ねた。

3コート3ベーク方式の鋼板塗装ライン

同工場には呉・市川工場で生産した溶融亜鉛めっき鋼板を塗装する多目的塗装ラインがある。このラインは3階建てで、約1千メートルを通板する間に塗装が施される。

塗装ラインの特長は、塗装と焼き付けを3回ずつ行う3コート3ベーク方式と印刷設備だ。1回目は下地塗装で、密着性・耐食性を高める。2回目は上塗り塗装で、耐候性・意匠性を高める。さらに、必要に応じて3回目の塗装を施すことで、より意匠性の高い鋼板が製造可能となる。また印刷設備を併用することにより、さまざまな色柄の表現も可能である。3コート3ベーク方式の塗装ラインは同社他工場にはなく、大阪工場から全国に高級鋼板を出荷している。

生産能力は月産5千トンで、数百色もの生産実績があり、その大半が高級鋼板だ。冷蔵庫ドア用などの家電用途向け鋼板は外観への要求レベルが高いが、同社の塗装ラインはほとんどの色や質に対応してきた。

年間400~500本のロール製造

ロールの製造は同社では同工場のみ。鉄鋼・製紙・ゴム・プラスチックなどの産業分野で使用されるロールを製造している。特に鉄鋼用ロールの製造では、遠心鋳造工程が製品の品質を大きく左右する。この工程ではまず、高速で回転する円筒形の金型に溶けた鉄を鋳込み、遠心力により金型内面に押し付けて、円筒状に固めて胴部を形成。その後、胴部を直立させて上下に金型を取り付け、軸部用の溶湯を鋳込んで胴部と軸部を溶着させる。二段階で鋳造するのは、両部位に求められる材質が異なるため。それぞれの溶湯の成分設計と鋳造後の熱処理技術により、胴部は耐摩耗性や、使用中のクラック・焼き付きの発生を抑える耐事故性などに優れ、軸部は靱性(粘り強さ)に優れたロールが製造可能となる。

同工場では15トンを中心に、最大で70トンもの大型ロールも製造する。年間400~500本のロールを製造しており、大半が国内向けの鉄鋼用ロールだ。品質面だけでなく技術サービス面にも注力しており、顧客対応は関西なら早ければ当日、関東や九州でも翌日には駆け付けるという。海外向けについては、中国、台湾、韓国などの東アジアが中心。

自社製鋼板を用いたエクステリア商品・建材商品

同工場では、同社で製造しためっき・塗装鋼板を用いたヨド物置やヨドルーフなどのエクステリア商品・建材商品も製造している。そのため、プレス機や、ロール成形機など多数の加工設備がある。

高品質を追求した研究開発や品質検査の実施

同工場では、各部門で研究開発や厳しい品質検査を実施している。鋼板部門には商品開発センターがあり、高級鋼板の研究を重ね、新機能の付加などで、より付加価値の高い新商品を開発する。ロール部門については、ロールの耐摩耗性と耐事故性のさらなる向上のため、実験溶解炉を設け、安全かつ高品質ロールへの品質改良を欠かさない。エクステリア・建材部門については、防耐火や扉開閉など国内でも有数の性能試験場を有し、商品改良している。同工場は、3部門すべてで、高品質な商品を製造し、さらなるユーザーへのきめ細かい対応を実現していく方針だ。

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