1軍投手枠は13人、当確多数で残り席わずか…ソフトBの熾烈な投手陣争い

12球団が各地で行なっている春季キャンプ。2月も終盤に差し掛かり、練習試合やオープン戦などの実戦が中心となってくる。各球団それぞれに競争があるが、その中でも特に熾烈なアピール合戦が繰り広げられているのが、今季の日本一奪還に燃えるソフトバンクだ。

昨季9勝を挙げた東浜巨【写真:荒川祐史】

狭き門を巡るソフトバンク投手陣の熾烈な争い

 12球団が各地で行なっている春季キャンプ。2月も終盤に差し掛かり、練習試合やオープン戦などの実戦が中心となってくる。各球団それぞれに競争があるが、その中でも特に熾烈なアピール合戦が繰り広げられているのが、今季の日本一奪還に燃えるソフトバンクだ。

 投手、野手ともに分厚い戦力層を誇る上、このキャンプでは続々と若い力が存在感を発揮している。1軍入りは実に狭き門だが、ここでは投手、野手に分け、ここまでのキャンプを踏まえながら、開幕1軍争いの行方を占ってみたい。

 まずは投手だ。工藤公康監督が就任した15年から、28人の1軍枠のうち投手は13人が基本。先発6人、リリーフ7人として考えてみる。

 先発陣は、とてつもなく激しい競争に置かれている。

○当確:和田毅、武田翔太、千賀滉大、バンデンハーク

 すでに、この4人は当確と言っていいだろう。昨季の最多勝、最高勝率の2冠に輝いたベテラン左腕・和田はもちろん、WBCに出場する武田、千賀、バンデンハークは、アクシデントがない限り、ローテ入りは間違いない。となると、残る枠は2つしかない。

○有力:東浜巨

 残り2枠のうち1つは、昨季9勝を挙げた東浜が掴むことが有力か。昨季はプロ最速となる150キロをマークするなど、シーズン中も成長し続ける姿を見せた。キャンプ中のブルペンでも勢いのあるボールを投げ込んでおり、初の実戦登板となった18日の紅白戦では2イニングを無失点。25日の侍ジャパンとの試合でも先発する予定だ。

実質1枠を巡り、10投手がアピール合戦

○競争:攝津正、中田賢一、大隣憲司、松坂大輔、田中正義、高橋純平、山田大樹、笠原大芽、石川柊太、松本裕樹

 昨季ローテに入っていた中田がローテ入りに最も近いが、キャンプではまだフリー打撃に登板した段階で、他の投手よりも調整のペースが遅れている。大隣もキャンプ中に腰などを痛めたことでペースダウン。ドラ1の田中正義は変化球の投球時に腕の振りが緩む癖が判明し、制球やフィールディングにも不安が残るだけに、課題克服が優先か。

 松坂はキャンプ序盤からハイペースで調整を進めてきたが、蓄積した疲労を抜くために第4クールでペースを落とした。実戦登板はこれからとなるため、その結果、内容が問われるだろう。

 順調に調整を進めるのが、打撃投手、実戦登板ときっちりと段階を踏んでいる34歳の攝津。アピールに成功しているのは20歳の松本、19歳の高橋か。初の実戦登板となった紅白戦では、共に2回をパーフェクト投球。制球とキレで勝負する松本、最速154キロの球威で押す高橋と、タイプの異なる2人の若き右腕は首脳陣からの期待も高い。山田、石川、笠原も持ち味を見せているが、前述の3人に比べるとインパクトに欠けるか。

 先発ローテで実質空いている椅子は1つ。それを10人の投手で奪い合う形だ。WBC出場の3投手がチーム再合流時の状態次第では、開幕ローテに空きが出る可能性もあるが、いずれにせよ、狭き門であることは変わりない。

リリーフ7枠のうち5枠は当確、残り2枠の争いは…

 次にリリーフ陣に目を向けてみると、こちらも厳しい競争が待つ。

○当確:サファテ、スアレス、岩嵜翔、森唯斗、五十嵐亮太

 守護神サファテの地位は不動。昨季の働きから見ると、セットアッパーにはWBCベネズエラ代表に入ったスアレス、そして岩嵜翔が入る可能性が高い。過去の実績から見ても、森、五十嵐は順当に1軍の枠に入るはずだ。

○競争:飯田優也、嘉弥真新也、島袋洋奨、寺原隼人、加治屋蓮、岡本健

 飯田、嘉弥真、島袋は、巨人FA移籍した森福允彦の後釜を狙う左腕。チームに1人は中継ぎ左腕を置きたいだけに、1枠は3人のいずれかが射止めることになるだろう。その座に最も近いのは飯田か。3人の中では1軍実績が豊富で、140キロ台後半の真っすぐとスライダーを武器に三振を奪える。ブルペンや実戦でもアピールに成功している。嘉弥真は昨秋からサイドスローに挑戦。文字通りの「左キラー」として存在感を示せるか。最も実績に乏しい島袋は、これから相当の結果、内容を残す必要があるだろう。

 そうなるとリリーフ陣に残された枠は、あと1席。この枠を、残された左腕2人、寺原、加治屋、岡本、そして先発争いから漏れた投手で競うことになる。

 見渡してみると、2チーム分になるほどのピッチングスタッフを抱えるソフトバンク。25日に行われる侍ジャパンとのオープニングマッチを手始めに、対外試合がスタートする。ここから競争はさらに激化。選ぶ側の工藤監督はじめコーチングスタッフは、さぞ悩ましい日々を送ることだろう。

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani

© 株式会社Creative2