【ミャンマーでCC稼働 現状と展望】森田良幸アール・ケイ会長「日本ブランド」で拡販 2期工事で2次加工拡充

アール・ケイ・森田会長

鉄鋼貿易商社のアール・ケイ(本社・大阪市西区、会長・森田良幸氏)は、ミャンマーの最大都市であるヤンゴン近郊のティラワ経済特区(SEZ)でコイルセンター(CC)「RKヤンゴンスチール」を稼働した。昨年11月に開所式を開催。順調に操業を始めている。現状や展望などについて、森田会長に話を聞いた。(宇尾野宏之)

――現地でCCおよび鋼材加工業を始めた経緯について。

「ミャンマーとは鋼材貿易を通じて20年来の付き合いがある。ミャンマーで鋼材貿易を始めたのは、当社がパイオニアだろう。ベトナムでの取引はもっと長く、現地でCCを手掛けようと検討したこともある。同国は主力販売先であり、年50~60万トンの鋼材を輸出している」

「ミャンマーの人口は約5200万人だが、2016年の鋼材見掛け消費量は約255万トンで、人口1人当たりの消費量は約50キロに止まっている。ベトナムはすでに250キロ。20年前には両国にそれほどの差はなかった。成長の余地は十分に大きいと考えている」

「03~06年にはヤンゴン近郊で小規模CCを現地パートナーと合弁で運営していた。利益を上げていたものの、サイクロンにより港が使えなくなり、やむなく閉鎖した」

「ミャンマーは鋼材に限らず、セメントなどインフラ材料のほとんどを輸入に依存している。だが、自国企業の成長を目指すため、外資系企業の投資に対してその成長を阻害しないように制約もある。当社も鋼材加工工場の許認可を取得するのに2年を要した」

――ミャンマーの潜在的成長力に期待が高まっています。

「テイン・セイン前大統領から現在のアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が率いる政権に至るまでの政治・経済改革によって、多様なビジネスチャンスが生まれている。また、経済制裁もここ数年で徐々に解かれ始め、昨年9月にはアウン・サン・スー・チー氏とオバマ大統領が会談し、翌月にはミャンマーへの経済制裁が全面的に解除された。同じようなタイミングで稼働できて嬉しく思っている」

――今年1月には日本商工会議所など日本経済界から要人が視察に訪れました。

「計67人の方に視察していただいた。日本商工会議所の三村明夫会頭をはじめとした経済界要人、また経済産業省にも訪問していただいた。ティラワは、日本企業が出資し運営する工業団地。Bゾーンも来秋には竣工するそうで、日本からの進出も増えれば、ビジネスチャンスも拡大するのではないかと期待している」

――工場の現状は?

「足元の月産量は約1500トン。販売先の需要分野は建築・土木・機械・化学・造船など多岐にわたっている。いまはミャンマー全土をローラー作戦で営業展開しており、早期に2千トン以上とし、年内には2500トンくらいにまで増やしたい」

「常駐する日本人スタッフは4人。非常に若いスタッフたちだが、英語も堪能な優秀なスタッフたちだと思っている。工場のローカルスタッフは15人。ミャンマーでは離職率が高いが、スタッフ全員が工場建設に携わっている。したがって『自分たちの工場だ』との誇りを抱いて働いている」

――2期拡張工事も予定しています。

「すでに敷地5千平方メートルは確保している。現在は加工板厚6・0ミリおよび12・0ミリのレベラーがそれぞれ1ラインあるほか、ベンダー、シャーリングマシンなどもあり、今後はプラズマ溶断機を導入する計画だ。2期工事では2次加工の拡充を予定しているが、建材加工および、薄物のスリッター・レベラーラインの導入も検討している。一歩ずつ着実に前進したい」

――今後の展望は?

「『日本ブランド』で勝負したいと考えている。ミャンマーは中国材のマーケットだが、中国材は『安かろう、悪かろう』で、低価格だが品質に難があり、高品質な日本材を使いたいというお客さんがミャンマーでも増えている」

――設備は日本製です。

「レベラーは、厚物はコーハン製で、薄物は園田エンヂニアリング製。その他の設備も日本製を揃えている。ミャンマーには本格的なCCがなく、ベトナムでも平坦度(フラット)をきっちりと出せるレベラーは少ない。価格競争では中国材に勝てない。高品質・安定供給を軸に日本のブランド力を高め、拡販を目指していく。また、工業化・近代化を進める上で、鉄鋼は欠かせない。高品質な日本製鋼材を供給することで、ミャンマーの近代化に少しでも貢献したいと考えている」

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