MLBスカウトが見る侍ジャパン 4番筒香は「納得」、菅野は「エースと期待」

WBC=ワールド・ベースボール・クラシック。野球界の世界一を争う戦い。2017年、今年もこの戦いが始まろうとしている……。はたして、今回のサムライジャパンはどうなのだろう。そして、他国の本気度は? 注目されている日本の選手は? メジャーリーグ球団の現役担当スカウトが率直な意見をくれた。

筒香は「動くボールに適応できる」

 WBC=ワールド・ベースボール・クラシック。野球界の世界一を争う戦い。2017年、今年もこの戦いが始まろうとしている……。はたして、今回のサムライジャパンはどうなのだろう。そして、他国の本気度は? 注目されている日本の選手は? メジャーリーグ球団の現役担当スカウトが率直な意見をくれた。

 過去3回のWBC。やはり存在感を発揮したのは、経験豊富な選手であった。中でも、気持ちを、姿勢を、前面に出していたのはこの男だったのではなかろうか。マーリンズのイチロー外野手。韓国に対して「向こう30年は日本に手が出せないぐらいに…」と発言したことは大きな話題を呼んだ。

 そこまでの選手は今のジャパンにはいるのか。同スカウトは「一番、気になったのはイチロー。彼の存在感、プレーの質はやっぱり飛び抜けている。経験値も高いし、イチローがいるだけで相手チームにとっても脅威。年齢とかは一切、関係ない。チームが、ジャパンが勝つために、という部分だと思います」と話す

 各国がスター級の選手を代表に選出。今回のWBCはこれまで以上に盛り上がるだろう。そして熾烈な戦いになることが予想される。海外では「2回の世界一を達成したサムライジャパン」「今回は世界一を獲れる」との声も挙がるが、現実はそこまで甘くない。

「正直、厳しいかもしれない。例えば、アメリカが良い選手を揃えてきた。戦う気持ちがある。メジャーサイドはこれまであまりWBCには関心がなかった。でも今回は、良い選手を出してきた。タイトルを獲ろうというのがある。だから大会としてすごく面白いと思う。この状況で戦えるジャパンはすごく良い経験ができる」

 国際試合の意味。日本の中でプレーしているだけではなく、海外の「猛者」と向き合う。フィジカルやメンタルなど、選手としてすべての面で自分のステップアップにつながる。選手のみではない。スカウトを含め、関係者などにとって大きい舞台がここにある。

菅野は「目先を変えて抑えられる」、筒香は「スイングの軸がぶれない」

「スカウトの立場としてWBCの存在はうれしい。様々な国のポテンシャルに溢れた選手を見られる。しかもそれらの国の選手たちが直接、対戦してくれる。

 この選手は、こういうタイプには強い、弱い、というのを直接、目の当たりにできる。こういう機会はなかなかない。日本人選手がメジャーに挑戦した時には、というシミレーションができる」

 MLBの球団の方針、個々が置かれている状況などがあり、トップの選手すべてを招集するのは難しい。だがその中でも侍ジャパンは最善の選考を行った。現在いる選手、関係者、ファンのすべてが「世界一」を望んでいる。

「今回、日本人メジャーリーガーは青木宣親(アストロズ)しか出場しない。正直、アメリカの現状を知っている選手がもっといればと……」

「とはいえ、NPBからも素晴らしい選手が選出されている。エースとして期待できるのは、菅野智之(巨人)。彼の安定した投球、制球力、多くの球種。外国人選手の目先を変えて抑えられると思う」

「また、筒香嘉智(DeNA)。彼はスイングする際の軸がぶれない。それにスイングスピードが速い。だから逆方向にも打てるし、タイミングを抜かれても拾ってバットに乗せられる。よく言われる外国人投手の動くボールにも適応できる。4番に置かれたのも納得ですね。彼の前に走者を出して、期待したい」

 過去のWBCを見渡しても、今回はなかなかタフな戦いになることが予想できる。しかし、彼らはやってくれるはずだ。

山岡則夫●文 text by Norio Yamaoka

1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。 Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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