厚板溶断加工大手の中嶋産業(本社・大阪市住之江区南港、社長・中嶋基博氏)は、関東地区において、浦安工場に続く2カ所目の生産拠点となる「かずさ工場」(千葉県君津市)をこのほど竣工した。10億円を超える大型投資となる新工場。かずさ工場を中心に同社の現状や展望について、中嶋社長に話を聞いた。(宇尾野宏之)
――まずは取り巻く現況から。
「喫緊の課題は、メーカー値上げ分をどう転嫁するか。当社においても安値切り上げは進めているが、それ以上はまだ難しい。また、スポット取引となる店売り・仲間売りに関しては、値上げが徐々に進展しているが、ユーザー向けはまだこれからだ」
――需要動向は?
「多少の仮需はあったものの、実需はそれほど変わっていない。産機・建機分野ともに明るい兆しが見え始め、五輪を控え建設関連需要も増えると思うが、現状を変えるほどのインパクトはなさそうだ。需要動向は、これ以上悪くなる要素は見当たらないものの、目立って良くなる要素もない。在庫については、足元で過剰感はないが、ひっ迫感もない。今後、一部厚板ミルの火災などにより、ひっ迫感は強まるとみている」
――かずさ工場の概要について。
「敷地面積は約1万5千平方メートルで、工場棟が2棟、事務所棟が1棟ある。主要加工設備は、NCガス溶断機・プラズマ溶断機・3KWファイバーレーザ加工機がそれぞれ1台ずつで、開先機などの二次加工設備もある。工場は新日鉄住金エンジニアリングさんに施工していただき、加工設備も含め、すべて工期通りに進んだ。新日鉄住金システムさんをはじめ施工・設備メーカーさんには感謝したい。おかげで予定通りに竣工できた」
――同工場の展望はどのように。
「ようやく材料がそろい始めたところで、本格的な操業はこれからだ。人員はいまの5人から12人にまで増やす予定であり、人員体制を含めて計画している体制が整うには年内いっぱいかかるとみている。若手を中心に優秀な作業員を配属しつつ、本社からもベテランによる技術指導など頻繁に応援に駆けつけており、なるべく早期に操業を軌道に乗せたい」
「当面は大阪で手掛けていた加工を現地で対応するのが主な仕事になる。浦安工場でできなかった大型品を手掛けるのが狙いだが、2月は月産100トン程度にとどまりそうだ。年内までには月産量200~300トン程度にもっていきたい」
――他工場の状況はどうですか?
「14年8月に稼働した浦安工場はようやく月次で黒字が出始め、通期でも黒字を確保できそうだ。九州の大牟田工場は加工賃の低迷が響き、赤字ではないが、当社グループで最も収益が低下している。また、関西にある6カ所の工場は安定した操業を続けているが、これから仕入れ値が上がってくる。収益を確保するためには勝負どころになりそうで、コストアップ分を転嫁していくよう、営業に徹底したい」
――設備投資など今後の展望は。
「何よりも、かずさ工場の操業を軌道に乗せること。設備投資できる余地は残しているが、当面は既存設備を最大限に活用できるように努めていく。営業面では、サービス・納期・品質などにおける当社の良さを認めていただきながら、数量を徐々に増やしたいと考えている。四国の愛媛工場で老朽化更新を予定しているほか、他設備投資については、基本的にはメンテナンスが中心。かずさ工場を順調に立ち上げるのが最優先課題になる」