【トップインタビュー 日亜鋼業・国峰淳社長】収益確保へ早期値上げ完遂 技術サービス部門新設、ソリューション提案強化

日亜鋼業・國峰社長

――2016年4~12月期決算は、売上高がほぼ横ばい、経常利益が約61%増の7・6億円となりました。感触は。

「経常増益は、連結子会社のジェイ‐ワイテックスの黒字転換や海外合弁会社の大幅な赤字縮小が大きい。当社単独では、足掛け4年かけて大規模投資を行った本社工場(兵庫県尼崎市)のリフレッシュ工事が完了し、歩留まり向上・省エネ・物流改善などの投資効果が顕われたことに加え、自家発電活用によるエネルギーコスト低減や増産効果などもあり増益となった」

――昨年末に、今年2月出荷分から普通線材製品全品種をトン当たり2万円以上、高力ボルト製品全品種をトン当たり15%以上値上げすると発表されましたが、進捗状況は。

「母材価格だけでなく、副原料やエネルギーコストも上昇し、自社努力だけではカバーできず、引き続き安定供給責任を果たしていくために、お客様に対し相応の値上げをお願いせざるを得ない状況だ。年明けより顧客に諸事情を懇切丁寧に説明し、値上げの趣旨について理解は進んでいると認識している。早期の値上げ完遂による収益確保を目指したい」

――足元の需要環境はどうですか。

「普通線材製品事業については、土木分野の低迷やメガソーラーブームのピークアウトなどの影響により、足元はいまひとつ需要の盛り上がりに欠けるものの、今後は災害復旧需要などが期待できる。既存市場でのニーズの掘り起こしと新規分野での需要開拓にも注力していきたい。新規分野では、他素材代替需要の視点を含め、リピート性の高い製造業、農業・畜産・水産業、都市型土木などを有望視している。獣害防護柵は獣害対策の政府予算が動物駆除にシフトしたため苦戦中であるものの、ゴルフ場などの民需分野への拡大を推進するとともに、動物駆除のためのおり・罠と獣害防護柵のセット商品の販売も展開中だ」

「そのほか、特殊線材製品(硬鋼線・鋼索)は、自動車向けが好調に推移。高力ボルトも需要がおおむね堅調で、今後東京五輪や都市再開発関連の需要も顕在化する見通し」

――国内グループの状況は。

「黒字化したジェイ‐ワイテックスも主副原料コストの上昇に見舞われており、製品価格への転嫁が急務。新日鉄住金と共同開発した、高耐食性めっき硬鋼線『タフガードハード』や高品位ばね用めっき鋼線などの新製品の拡販、鋼索の一層の需要開拓、工程整流化や生産効率化などのコスト低減の推進により、従来以上の収益貢献を期待している」

「滋賀ボルトは当社製品の受注生産が主な役割。省エネなどに積極的に取り組み、業績を改善している。太陽メッキは、当社の顧客との関係強化により加工量を拡大し、経常利益も確保している」

――10%アルミ合金めっき線などを製造販売する中国の合弁会社『天津天冶日亜鋼業』と、亜鉛めっき線や合金めっき線を製造販売するタイの合弁会社『TSNワイヤー』の状況は。

「天津天冶日亜鋼業は、営業運転開始から4年が経過。河川護岸用かご向けは現地競合他社の参入により過当競争が起きている。物件に厚めっき線を織り込むビジネスモデルを再構築することにより差別化を図る方針だ。堅調な需要が見込めるケージ向けでは現地の流通と連携して拡販に努める。TSNワイヤーは、タイ国内では一定のシェアを確保している。合金めっき線などの拡販によるプロダクトミックスの改善や、有刺鉄線などの川下製品への展開、ASEANおよびオセアニアへの輸出を推し進めていく」

「両社とも、月次では黒字計上もあり大幅に収益を改善しているが、通期では赤字。マーケット環境が激変する中でも、来年度には両社ともゼロベースか黒字化にもっていきたい」

――新たな取り組みについては。

「昨年6月に技術サービス部門を新設、6人の技術スタッフを専従で配置した。営業部門と連携して、お客様のニーズを踏まえた既存商品のPRや新商品・利用技術の開発を積極的に推進していく。技術スタッフが直接客先に足を運び、お客様のご要望にお応えしたソリューション提案を行っており、既にいくつかの拡販事案が具現化するなど着実に成果が出始めていると実感している」

――今後の方針を。

「当社のベースとなる既存顧客・伝統的なマーケットは大切にしながら、チャレンジ精神を持って官需・民需の新規開拓に取り組む。厳しい現状を打開するため、技術サービス部門をフル活用してマーケットインの発想でソリューション提案を推し進め、既存・新規の両軸から戦略を立案する」

「リフレッシュ工事という大型戦略投資の早期かつ最大限の効果発揮も目標のひとつ。これらを踏まえて、今期の連結経常利益9億円の目標を是非とも達成し、来期はさらに飛躍したい」(綾部翔悟)

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