異国情緒の街いきいき 「土門拳文化賞」受賞 横須賀のストラーン久美子さん

 プロ写真家への登竜門といわれる写真コンテスト「土門拳文化賞」に、横須賀市のストラーン久美子さん(61)が選ばれた。「横須賀ブルー ペルリ164年目の再上陸を想起する」と題した30枚組のカラー作品は、黒船来航とトランプ米大統領誕生を重ね、ペリー上陸の地であり、現在は米軍基地がある横須賀の異国情緒漂う日常を切り取った。

 ストラーンさんは、東京都出身。高校から米国に単身渡り、20年ほど前に帰国。現在は米海軍横須賀基地で働いている。

 趣味として写真の撮影を始めたのは4年前。雑誌で見た月の風景写真にひかれてカメラを購入して以来、自宅近くの県立観音崎公園や職場の基地など、身近な場所で毎日数百枚を撮り続けている。

 写真はほぼ独学。これまでコンテストに応募したことはなかったが、昨年の米大統領選でトランプ氏が勝利したとき、そのイメージが幕末に浦賀沖に現れた黒船と重なった。「黒船は未知数という意味。米国と日本にどのような未来が待っているのか」をテーマに、外国人向けのバーが立ち並ぶ夜のどぶ板通り商店街や、自宅近くをランニングする腕にタトゥーが入った米兵などの写真を選んだ。

 同賞の選考委員長で写真家の江成常夫さんからは「トランプ米大統領の言動が波紋を広げている時、70年余りにわたってなお、金縛りになったままの基地問題を鋭く突いた作品。時節と相まって秀逸」と評価された。今月5日には山形県酒田市での授賞式に出席。「盾の重さが6キロぐらいあり、自分が思っていたより大きな賞だった」と話す。

 50代後半で撮影を始めた当初は、周囲から「今からやってどうするのか」と言われることもあったが、「何かを始めるのに、遅すぎることはない。目標を立ててやればできると証明したかった」とストラーンさん。「これからも毎日こつこつ撮っていきたい」と笑顔を見せた。

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