【ノーラエンジニアリングの生産拠点「東北ノーラ」】〈フェライト系ステンレス配管〉 17年度生産倍増目指す、市場での認知度向上

ステンレス配管大手のノーラエンジニアリング(東京本社・東京都千代田区、社長・堀田幸兵氏)は、戦略商品のフェライト系ステンレス配管に対する市場の認知度が高まってきたことを受け、生産拠点の東北ノーラ(本社・福島県二本松市、社長・糸澤尚人ノーラエンジニアリング常務営業本部長)で2017年度は生産倍増を目指す。循環式空調設備(冷水・冷却水・冷温水)や消火設備(連結送水管など)、雨水排水設備(雨水配管)、蒸気設備で伸びを見込んで、東北ノーラで能力拡充、人員増強を図る。

敷地内で暴露試験も行う

軽量で高耐久・高耐震性

ノーラエンジニアリングはプレハブ配管製造では滋賀工場(炭素鋼)、愛知川工場(オーステナイト系ステンレス)、東北ノーラの3拠点を持つ。東北ノーラは13年3月に設立した製造子会社で、14年5月に二本松工場(工場長・守沢敏夫専務)を開設した。以来、世界で先陣を切ってフェライト系ステンレス配管の市場開発に取り組む中、専門拠点としての位置付けが鮮明になってきた。

同社のフェライト系ステンレス配管は、低炭素フェライト系ステンレス「SUS430LX」と管端つば出し管継手「CFジョイント」をプレハブ加工した配管ユニット。生産拠点の東北ノーラはパイプ切断、ノーラ加工(管端つば出し加工)、バーリング加工、ベンダー加工、溶接、電解研磨、全数検査、養生などを行い、付属品とともに出荷する。15年4月の初納入以降、大型商業施設、超高層ビル、文教施設、病院など35件の納入実績がある。

ニッケルを含有するオーステナイト系に比べれば低コストでオールステンレス配管システムが実現でき、炭素鋼配管に比べれば管の薄肉化やサイズダウンにより大幅な軽量化が可能で、施工性も良い。建築構造物の高耐久性・高耐震性に寄与する部材であると同時に、施工者に優しい部材でもある。現在は雨水排水設備が6~7割を占め、空調設備が2~3割、消火設備が1割弱の構成で、17年度は「空調設備の比率を6割に高めよう」(糸澤社長)と狙っている。

空調設備向け増産

東北ノーラの生産構成でオーステナイト系とフェライト系の比率は現在半々だが、17年度は能力を拡充した上でフェライト系が8割を占める見通しだ。ノーラエンジニアリングはフェライト系ステンレス配管の17年度売上高を6億円と今期比倍増させる計画で、その後も成長性は高まると見ている。最近半年のSUS430LX鋼管の使用量は月約20トン。韓国材がメーンで日本材の使用も始めている。

ノーラエンジニアリングの主力工場(滋賀、愛知川)はいずれも滋賀県にあり、東日本の生産拠点は東北ノーラのみ。かねて関東と東北にアクセスしやすい立地を探していたが、工場進出を決めたのは東日本大震災の後だった。政府・自治体の補助金で投資負担が軽減できたことが大きいが、震災復興を願う二本松市関係者の強い思いが背中を押した。

OJTで若手を育成

現在の人員は23人で、4月には新人を迎えて25人となる。愛知川工場長から東北ノーラ・二本松工場長に転じた守沢東北ノーラ専務はものづくりの要として重責を担う。「雇用を含めた地域産業の活性化への期待」(二本松市産業部商工課)を背負い、「事業を拡大し採用も増やし、復興支援に貢献していく」(糸澤社長)と将来を見据えている。(谷山恵三)

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