V戦士・岩村明憲氏が豪州戦の千賀快投を絶賛「あのフォークは打てない」

2大会ぶりの優勝を目指して第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を戦う野球日本代表「侍ジャパン」。7日の第1戦キューバ戦では乱打戦を制して白星スタートを決めると、8日の第2戦オーストラリア戦では、序盤は投手戦となった接戦を中田翔内野手(日本ハム)と筒香嘉智外野手(DeNA)のWアーチで決着をつけた。

ルートインBCリーグ福島ホープスで選手兼監督を務める岩村明憲氏【写真:Getty Images】

好守連発の二塁・菊池に「ニンジャ菊池は安心感を与える」

 2大会ぶりの優勝を目指して第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を戦う野球日本代表「侍ジャパン」。7日の第1戦キューバ戦では乱打戦を制して白星スタートを決めると、8日の第2戦オーストラリア戦では、序盤は投手戦となった接戦を中田翔内野手(日本ハム)と筒香嘉智外野手(DeNA)のWアーチで決着をつけた。

 1次ラウンド突破に王手を掛けた侍ジャパンが見せたオーストラリア戦の戦いぶりを、第1回、第2回WBC優勝メンバーで、現在はルートインBCリーグ福島ホープスで選手兼監督を務める岩村明憲氏は、どう見るのか。岩村氏は中田&筒香の2本塁打が生まれる伏線を張った千賀滉大投手(ソフトバンク)の快投を絶賛する。

「この試合は、何と言っても千賀でしょう。内野安打でランナーを1人出したものの、2回を投げて打者7人でピシャリと締めた。4奪三振。ストレートは155キロ出てたよね。そこへ135、6キロのフォークが来るんだから、あれは打てない(笑)。外国人選手は日本人のフォークに苦戦するイメージがあるかもしれないけど、この場面に限っては、千賀のフォークの落差。あれだけ落ちるフォークはなかなかないよ。

 6回にマウンドに上がった彼がオーストラリアに付け入る隙を与えなかったことで、7回先頭の(中田)翔の勝ち越しホームランにつながった。あそこで試合の流れを渡さなかった千賀の功績は大きいね。

 千賀は後ろ(9回)で使ってみても面白いんじゃないかな。立ち上がりは抜群だし、あのストレートとフォークがあれば、1イニングを完璧に封じることは難しくない。経験のある牧田(和久)ももちろんいいけど、千賀っていうオプションも作れる」

 日本は初回に先制の好機を迎えるが得点できず。2回に、先発・菅野智之投手(巨人)がデサンミゲルに一発を浴び、1点を追う形となった。打線は、オーストラリア先発アサートンの前に、1回1死から打者12人が連続凡退。「少し浮き足立っていた」日本を落ち着かせたのが、千賀の快投だったと見る。

「ゲッツーは、相手の攻撃の流れを断ち切れる」

 同時に、要所要所で離れかけた試合の流れを引き留めたのが、二塁・菊池涼介内野手(広島)の“目立たない”好守だ。守備の名手として知られる菊池は、いとも簡単に打球を捌き、凡打や併殺に仕留めるが、何気ないプレーに見えるのは、菊池が見せる打球に対する1歩目の動きの速さや絶妙なポジショニングにある。二塁手の経験を持つ岩村氏は、そんな名手を「ニンジャ菊池」と大絶賛する。

「ここでヒットを打たれたらマズいっていう場面で、いい具合に菊池のところに飛んでいったよね。東京ドームで応援する人、いやテレビ観戦している人も含め、二塁に打球が飛んだら、全員がホッとするんじゃないかな。これはアウトで間違いないって。そうやって周りに安心感を与えられる守備をするニンジャ菊池はさすがだね。

 ワンプレーで2つアウトを取れるゲッツーは、相手の攻撃の流れを断ち切れる。いくら打者に個々の力があっても、試合の流れを味方につけていなければ点には結びつかない。豪快なホームランで流れが一変することもあるけど、出る確率は高くないよね。それよりも出る確率の高い併殺プレーをしっかり決めることができるか。野球の基礎、ファンダメンタルな部分ではあるけど、ここはおろそかにはできない。

 俺が楽しみになのは、これから勝ち進む中で4-6-3、6-4-3のゲッツーが何個見られるのか。それを楽しみにさせるニンジャ菊池の存在はデカイ」

 オーストラリア戦の中で、打球が二塁へ飛んだ時、誰もがガッツポーズを作った瞬間があった。5回2死満塁。2番手・岡田俊哉投手(中日)がベレスフォードを二ゴロ併殺に打ち取った場面だ。ソロ弾一発で1点を先制された後、好投を続けた菅野だったが、5回に1死一、二塁としたところで、1次ラウンドの球数制限65球に達して降板。マウンドを継いだ岡田は制球が定まらず、暴投とストレートの四球で1死満塁のピンチを招いた。2人目ベレスフォードに対してもボールが先行。2ボールからの3球目。この日投げた唯一のストライク球で二ゴロ併殺に打ち取り、窮地を脱した。

劣勢を優勢に変える球場の雰囲気「360度すべて侍ジャパンを応援してくれる」

「あの場面は、球場の雰囲気、お客さんの声援が、打球をニンジャ菊池のところに運ばせた。俺も経験があるけど、特にWBCで感じる球場の雰囲気やお客さんの声援は、選手にいつも以上の力を引き出させるものがある。劣勢を優勢に変えるくらいの力があるね。東京ドームの中が360度すべて侍ジャパンを応援してくれるんだから。このホームアドバンテージは大きいね。

 マウンドに上がって6球連続でボールだった岡田に、あの場面でストライクを投げさせ、ゲッツーを打たせた。そうさせたお客さんの力はすごいし、それを受け止めてパフォーマンスで示せた岡田もすごい。岡田が持っているものだと思うよ」

 2連勝した侍ジャパンは、10日に第3戦中国戦を迎える。3戦全勝で1次ラウンド突破を目指すが、9日の中国vsオーストラリア戦で中国が負ければ、2次ラウンド進出が決定。そうなった場合には、第3戦での選手起用がポイントになるだろう。

「投げていない投手をマウンドに上げたいよね。先発は武田翔太だろうから、その後を藤浪(晋太郎)、増井(浩俊)、松井(裕樹)とつなぐ感じかな。

 問題は野手。キューバ戦で代打・内川(聖一)、守備固め・平田(良介)は使ったけど、田中(広輔)、秋山(翔吾)、大野(奨太)、炭谷(銀仁朗)が出てない。

 彼らもWBCの試合勘は大事だから、2次ラウンドに進む前に一度使っておきたいよね。レギュラーの調子も落としたくないだろうから、彼らをどのタイミングでどうに使うか。もちろん、中国に足をすくわれるようなことはあっちゃいけない。うまく選手を起用しながら、3戦全勝で1次ラウンドを突破してもらいたいね」

 韓国・ソウルで開催中のプールAでは、早くもオランダとイスラエルが1次ラウンド突破を決めた。12日から東京ドームで始まる2次ラウンドに侍ジャパンもコマを進められるのか。残り1戦も勝って、全戦勝利で2次ラウンドを迎えたい。

© 株式会社Creative2