《ブラジル》犯罪集団と戦ってきた判事、定年後も護衛を望む=30年のキャリアで禁固刑、延べ1千年以上=「避妊具のように捨てられたくない」と過激発言も

 オジロン・デ・オリヴェイラ判事(68)は、30年を超えるキャリアの中で、ブラジル国内の犯罪組織に常に断固たる態度で接してきた。
 数十人に及ぶ犯罪組織の被告に言い渡してきた禁固刑の年数は延べ1000年を超え、犯罪組織に対しても、容赦なく、資産没収の判決を出してきた。
 定年を間近に控えた同判事は今、定年退職することを恐れている。同判事は自分が刑務所送りにした犯罪組織の親玉たちから、死の脅迫を受けているにもかかわらず、連邦司法当局は同判事の定年後の護衛を保証していないからだ。
 「これではずっと退職できない。定年退職して護衛がつかない状態になれば、道に出た途端に殺されてしまう可能性だってある」と語っている。
 同氏によると「状況に応じて定年後の判事に護衛を付けるべし」と明文化された規定はないものの、脅迫されていた判事に護衛をつける権利を認めた例はあるという。
 オリヴェイラ判事は、「2014年に法務審議会に、この件を法務大臣に諮ってもらえるように要請したが、まだ何の返事もない」とした。
 同判事は、犯罪者に対する厳しい態度だけで有名になったのではない。有罪判決を下した後、判事はさらに、犯罪組織が薬物取引で得た農場、邸宅、飛行機、モーターボート、高級車などを没収する命令も下した。
 2005年にブラジル中西部のマット・グロッソ・ド・スル州ポンタ・ポラン市(同市はパラグアイと接しており、薬物犯罪が蔓延している)の刑事法廷判事に就任して以来、85の大農場、370の中農場、18機の飛行機、1万4千台の乗用車といった、総計20億レアル(720億円)相当の財産を犯罪集団から没収している。
 犯罪集団は同判事殺害を誓っており、2011年には武装した男たちがホテルに踏み込無と言う事件も起きたが、ちょうど客室にいなかったために事なきを得て、その後は陸軍宿舎に泊まることとなった。
 最終的には連邦警察官10人からなる警備がつき、裁判所に直接寝泊りする事となった。
 当時同判事を取材したブラジル紙は、オリヴェイラ判事が公判を行う小法廷にマットを敷いて寝ている様子を伝えた。
 同年7月には、パラグアイ紙が、同国で暗躍するブラジルの麻薬犯罪組織が、オリヴェイラ判事の首に30万ドルの賞金をかけたことを報じた。
 判事には護衛の他に、ライフル射撃にも耐える防弾仕様車があてがわれた。
 「30年の司法キャリアの内、18年は護衛つきだった。護衛がつき始めていた当時はまだ、子供たちも一緒に住んでいて、家族には大きな心労をかけた。自分のしてきたことに後悔はしていない。ただ、ずっと働き続けることもできない。これまでも何人もの犯罪者を断罪してきた。しかし彼らは年々重装備になってきている」と語っている。
 同判事は現在、ポンタ・ポランよりは危険な犯罪も少ないカンポ・グランデの判事を務めている。しかし護衛は24時間体制で続いている。
 同判事の手には、自分の命を狙う理由がある犯罪者のリストがあるが、その数は60人をくだらない。その中には、ブラジル2大犯罪組織の一つで、リオ州を本拠とするコマンド・ヴェルメーリョの頭領、ルイス・フェルナンド・ダ・コスタもいる。同判事はダ・コスタも何度も特別監獄行きにしている。
 オリヴェイラ判事は、定年後の護衛が認められなければブラジルから出るという。「要塞を作ってそこに住んでも殺されてしまうだろうから、南米以外の国へ行く。私は人生をずっと犯罪集団との戦いに費やし、奴らから財産を没収したりして、国を経済的に潤すことにも貢献してきた。避妊具のように使い捨てにされるのはゴメンだ」と語っている。(9日付エスタード紙より)

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