寄贈船水揚げ海の幸販売 NPO瀬谷丸

 三陸沖の海の幸を頬張って−。東日本大震災で被災した岩手県大槌町の漁師に漁船を寄贈したNPO法人「瀬谷丸」は10日、地元の横浜市瀬谷区で復興支援イベントを開いた。津波で壊滅的な被害を受けたあの日から6年。メンバーは寄付金集めに奔走した時と同じように声を張り上げ、大槌で水揚げされた水産物を販売。駆け付けた漁業関係者との絆を強め、なお復興途上の被災地に思いを巡らせた。

 カキやホタテを焼く香ばしい匂いが漂う相鉄線三ツ境駅前。この日のメインは定置網漁船「瀬谷丸」で取れたサケを加工したつみれ汁だ。「ずっと応援してくれる皆さんには、ありがたいの言葉しかない」。大槌の水産加工業佐々木貴範さん(45)は地元の漁師たちの思いを代弁し、約1500人の来場者に新鮮な三陸の幸をアピールした。

 未曽有の震災で津波に襲われ、1200人を超す死者・行方不明者が出た大槌町。瀬谷区民らの寄付金で2013年に寄贈された瀬谷丸は、1日に10トンを超すサケやマスなどを水揚げするなど漁業は回復傾向にある。土地のかさ上げや区画整理も進んだが、町全体の復興はまだ道半ばだ。

 新おおつち漁業協同組合の猪又明敏さん(31)は「町に戻ってくる人がいなくて、暗くさみしいまま」と語る一方で、「100%震災前に戻ることはなくても、人の集まる元気なまちに戻れるよう頑張りたい」と前を向く。

 瀬谷丸の露木晴雄理事長(37)は「これからも皆で被災地を思い、継続した支援を続けていきたい」。今夏には瀬谷の子どもたちを連れて岩手・大槌を訪れる予定だ。

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