V戦士・岩村明憲氏がMVP筒香に見る資質「いいのは打ち取られた後の姿」

優勝を目指して第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を戦う野球日本代表「侍ジャパン」は、10日の第3戦中国戦に7-1で勝利し、1次ラウンド・プールBを3戦全勝で突破した。

侍ジャパン・筒香嘉智【写真:Getty Images】

1次ラウンド1位通過が決定後でも、代表らしい戦いで勝利

 優勝を目指して第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を戦う野球日本代表「侍ジャパン」は、10日の第3戦中国戦に7-1で勝利し、1次ラウンド・プールBを3戦全勝で突破した。12日から始まる2次ラウンドでは、オーストラリアとの死闘を制してプールB・2位になったキューバ、韓国・ソウルで開催されたプールAで1位となったイスラエル、同2位のオランダと対戦。4チームのうち上位2チームが、アメリカはロサンゼルスが舞台となる決勝ラウンドに進出する。

 戦前からプールAの1位勝ち抜けが決定しながら、中国を相手に盤石な戦いを見せた侍ジャパンを、第1回、第2回WBC優勝メンバーで、現在はルートインBCリーグ福島ホープスで選手兼監督を務める岩村明憲氏は「意地の見えた試合だった」と評価する。

「すでに順位は決まっていたし、実力差のある中国が相手だったし、オープン戦的な雰囲気が漂ってもおかしくない試合だったけど、お客さんの前で日の丸がついたユニフォームを着て戦っているんだっていう意地を見せてくれたよね。そういう勝利だったと思う。

 その中でも色々な選手を試合に出して、出場しないと感じられない雰囲気を感じさせられたのは大きい。野手で出場していないのは(炭谷)銀仁朗だけかな。1イニングでも出られればよかったけど、捕手は万が一に備えて一人はベンチに置いておきたいから仕方ない。前回大会の経験もあるし、心配はしてないよ」

「小林の2ランは褒めてあげたいね」

 この日は2試合続けて先発出場していた青木宣親外野手(アストロズ)と坂本勇人内野手(巨人)がベンチスタートし、田中広輔内野手(広島)と平田良介外野手(中日)がスタメン入りした。「1番・遊撃」だった田中は、初回にセンター前で出塁して攻撃のトーンを決めると、積極的な盗塁で相手の失策を誘い、山田哲人内野手(ヤクルト)の右犠飛で先制ホームを踏んだ。7回にも二塁への内野安打で出塁後、盗塁を決めて生還。この回2点のダメ押しに一役買った。

「田中がよかったね。特に1回は、先発だった武田(翔太)がいきなりヒットを打たれて、得点こそされなかったけど三塁まで進まれた。その直後のヒット、先制点だったから、流れはグッと日本に寄った。普段とは違う控えという立場でも、しっかり自分の調整ができている。

 2回に出た小林(誠司)の2ランは褒めてあげたいね。元々肩には定評のあるキャッチャーだけど、WBC本戦が始まってから、打撃でも存在感を見せている。どんな形でも彼が自信を深められるようなプレーを重ねられれば、チームにとって大きなプラスになるよね。何しろ、小久保監督が『正捕手だ』って言ってるんだから。リードの面でも少しずついろいろなことを学んでいるんじゃないかな」

 1次ラウンドのMVPは筒香嘉智外野手(DeNA)が受賞した。打率.364、2本塁打、5打点の好成績。「打ってほしいと思うところで打てる打者になりたい」という本人が語る通りの働きを見せた。もちろん、岩村氏もこの決定に異論はない。

「(MVPは)筒香でいいでしょ。初めてのWBCで4番という大役を任され、プレッシャーが掛かる中でも、しっかりと結果を残した。

 何よりもいいのは、打ち取られた後の姿だよね。動じないというか、腐らずに淡々としている。もちろん、彼自身の心の中ではいろいろな感情が沸くだろうけど、それを外に出すことはない。4番っていうのは『打って当然』と思われるポジション。どんな投手が来ても、変わることなく思い切っていってほしいね」

2次ラウンドで意識したいのは「1球の重み」

 12日の2次ラウンド第1戦では、昨年11月に強化試合で2試合を戦ったオランダと対戦する。オランダの先発は、侍ジャパンの打者を熟知するバンデンハーク(ソフトバンク)が有力候補。野手もメジャー選手が集まるだけに、1次ラウンド以上に厳しい戦いが予想される。その中で意識しなければならないのが「1球の重み」だという。

「2次ラウンドで対戦するオランダ、イスラエルにはメジャー経験者も多い。1打席に1球の失投もない場合もある。だから、今まで以上にミスを少なくするか。

 打者の立場から言うと、ボール球に手を出して、相手投手を助けることは避けたいね。勝ち上がれば上がるほど、1球の重みが大きくなる。2次ラウンドでは、いかに早く相手投手に球数制限の80球を投げさせるかだよね。

 少し心配なのは鈴木誠也かな。中国戦は少し強引な打席が多かったように見えた。もちろん、打席では積極的に振っていってほしいし、それが彼の魅力。ただ思い切りよく振ることと、強引に振ることは別物だから。中国戦は、特に140キロを超える球がなかなか来なかったから、自分から打ちにいってしまったのかもしれないけどね。2次ラウンドでは強引さを見せずに、彼らしいバッティングを見たいな」

 世界一奪還という使命に燃える侍ジャパン。第一関門をクリアした侍戦士たちが2次ラウンドで見せる勇姿から目が離せない。

© 株式会社Creative2