新日鉄住金、水素・燃料電池展に3年連続で出展 水素供給用、素材からインフラ整備までグループ総合力をPR

新日鉄住金は、今月1~3日に東京・有明の東京ビッグサイトで開催された国際水素・燃料電池展「FC・EXPO2017国際水素・燃料電池展」に3年連続で出展した。これまでの新日鉄住金、新日鉄住金ステンレス、日鉄住金ステンレス鋼管に加え、今回から日鉄住金パイプライン&エンジニアリング(日鉄住金P&E)、日鉄住金テクノロジーが加わり、グループの総合力を結集。鋼材供給からステーション建設、材料評価までの水素事業ネットワークをPRした。また、着実に採用実績を伸ばしている高圧水素用ステンレス鋼「HRX19」の配管サンプル展示などが、多くの来場者の関心を誘った。

高圧水素用ステンレス鋼「HRX19」採用、着実に増加

「HRX19」で製作した看板

「FC・EXPO2017」のブースでは、新日鉄住金と日本製鋼所が共同開発した水素ステーション用鋼製水素蓄圧器の実物サンプルを展示した。同製品は新日鉄住金・和歌山製鉄所の継目無(シームレス)鋼管(クロムモリブデン鋼)を採用しており、5月に市場投入する予定。また、新たに開発した圧縮機と蓄圧器を組み合わせた小型パッケージユニットの高圧水素部位の配管や溶接継手類には、新日鉄住金の高圧水素用ステンレス鋼「HRX19」を採用している。

盛況だった出展ブース

HRX19は、ニッケル添加量をSUS316Lレベルに抑えつつ、マンガン、クロム添加量を適正化。オーステナイト系ステンレス鋼では最高水準の耐水素脆性(水素を吸収して素材がもろくなる現象への耐性)を実現した。SUS316Lに比べて2倍の強度を持つ。

HRX19を素材とした配管用継目無(シームレス)鋼管では、高圧水素環境下で最大40%の薄肉化が可能。配管内径の大径化による大容量、短時間水素充填ステーションが設計できる。また優れた溶接性を持っており、チーズやエルボといった配管部材にHRX19を使うことで、ねじ配管接合に比べて施工やメンテナンスコストの削減、配管システムの大幅なコンパクトが図れる。

今回出展した蓄圧器実物サンプルユニットは、蓄圧器本体が和歌山製鉄所の継目無(シームレス)鋼管、HRX19を使用した継目無鋼管を尼崎製造所と日鉄住金ステンレス鋼管の湘南工場、架台を大分製鉄所光地区の光熱押・特殊管工場でそれぞれ製造。「オール新日鉄住金グループ」のネットワークをPRした。

今回新たにグループとして参加した日鉄住金P&Eは、エア・ウォーター、鹿島建設、日本エアプロダクツと共同で北海道河東郡鹿追町に設立した「家畜バイオマス由来の水素製造供給施設「しかおい水素ファーム」を紹介した。

同設備は、北海道初の定置式水素ステーション。蓄圧器ユニット、現地配管中心に溶接施工でHRX19が全面採用された。高圧水素配管の約200カ所で溶接施工を実現。漏えいリスクを低減し、ステーション設備の省スペース化とメンテナンス性を飛躍的に向上させている。

同じく初参加の日鉄住金テクノロジーは、水素脆化評価技術の解説パネルを出展した。SSRT(極低歪速度引張)試験、高圧水素ガス暴露試験、拡散性水素分析装置(昇温脱ガス分析)を図解。また、高圧水素ガス中での疲労試験機の2分の1スケールモデルを展示した。

その他、水素ステーションや各配管部材へのHRX19の採用実績などをPR。多くの来場者の関心を誘い、開催期間中ブースに人波が途切れることはなかった。

ブースの横には、HRX19の継目無鋼管を使用した看板が設置されていた。これは、今回出展した蓄圧器ユニットの組立・溶接施工を手掛けた汎高圧工業から贈呈されたもの。よく見ると、曲げ加工や溶接カ所をふんだんに取り入れており、HRX19の加工性の良さをさりげなくPRしていた。

最終日の3日には、無料技術セミナーが開催された。新日鉄住金尼崎製造所カスタマー技術部製品技術室の小薄孝裕主幹が「水素社会に変革をもたらす究極の材料」として、HRX19の特徴や採用メリットなどを解説。立ち見がでるほどの盛況ぶりだった。

セミナーは満員に

3年連続の出展で、新日鉄住金の水素事業ネットワークは着実にマーケットに浸透してきたようだ。

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