産総研と吉野電化工業、銅めっきで新技術 炭素繊維強化樹脂に高密着

産業技術総合研究所(産総研)と吉野電化工業はこのほど、炭素繊維強化樹脂(CFRP)への密着性に優れためっき法を開発したと発表した。CFRP表面に銅をめっきし、導電性を高めることで航空機や風力発電機のブレードなど屋外で使用されるCFRP製構造物の耐雷性を大幅に改善できる。また、CFRPの中間素材である「プリプレグ」へのめっきのため、さまざまな形状に成形できる。今後は吉野電化が同技術の量産化プロセスの開発を進める予定。

高導電、航空機材など耐雷性向上

同技術は、硬化前のプリプレグ表面だけを簡単な湿式処理によって安定化させ、樹脂成分の溶出を抑えた上で、独自開発のパラジウムコロイド触媒で無電解めっきを可能にしたもの。同研究グループが、無電解めっきを施したプリプレグから作製したCFRP表面に銅を約100マイクロメートルの厚さで電気めっきし、導電性を高めたところ、同じ厚みの銅箔を貼ったCFRPに比べ耐雷性が大幅に改善することを確認した。

CFRPは炭素繊維と樹脂の複合材料で、軽量性や高い強度、放熱性を持つことからさまざまな製品での実用化が進んでいる。ただ、金属に比べ導電性が低いため、落雷などで大電流が流れた場合に大きく損傷する懸念がある。

これに対してはCFRP表面に金属膜を形成して導電性を付与する方法が有効だが、密着性に優れた金属膜の形成が困難だった。

また、落雷対策としてCFRP表面に金属網を張り付けるなどの処理が行われる場合もあるが、成型工程の煩雑さや本来の軽量性を十分に生かせないなどの課題があった。

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