侍ジャパン5連勝の快進撃は中継ぎ陣の功 V戦士・岩村明憲氏が熱闘を解説

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2大会ぶりの王座奪還を目指す野球日本代表「侍ジャパン」は14日、2次ラウンド第2戦でキューバに8-5で勝利。4大会連続決勝ラウンド進出に王手をかけた。

侍ジャパン・平野佳寿【写真:Getty Images】

キューバ寄りの流れを立て直した「5回・平野から始まる中継ぎ陣」

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2大会ぶりの王座奪還を目指す野球日本代表「侍ジャパン」は14日、2次ラウンド第2戦でキューバに8-5で勝利。4大会連続決勝ラウンド進出に王手をかけた。山田哲人内野手(ヤクルト)の先頭打者弾で先制した日本は2回に逆転を許すが、3回に筒香嘉智外野手(DeNA)の中前適時打で同点に追いつくと、2点を追う5回、1点を追う6回と合計3度も試合を振り出しに戻し、最後は8回代打で出場した内川聖一外野手(ソフトバンク)が決勝犠飛をライトファウルゾーンに運び、勝利をたぐり寄せた。

 第1回、第2回WBC優勝メンバーで、現在はルートインBCリーグ福島ホープスで選手兼監督を務める岩村明憲氏は「さすが内川。きっちり代打の役割を果たしたね」と、WBC3大会連続出場のベテラン野手を称賛する一方で、「打線が粘りを見せたこの試合で、俺が拍手を送りたいのは、5回・平野から始まる中継ぎ陣」と話す。

「5回・平野から始まる中継ぎ陣は素晴らしかった。6回に増井が1点取られたけど、それも含めて平野、増井、松井、秋吉、牧田がよく抑えたよ。4回までキューバ寄りだった試合の流れを立て直したからね。それが5回、6回、8回の打線につながっている」

 最近では、メジャーをはじめNPBでも中継ぎの重要性が再認識されている。メジャーでは、レギュラーシーズンはもちろんだが、プレーオフの短期決戦を勝ち抜くには、中継ぎ投手の層が厚いチームが有利だとされている。2013年には上原浩治(現カブス)、田澤純一(現マーリンズ)が大車輪の働きでレッドソックスを世界一に牽引。2014年ジャイアンツ、2015年ロイヤルズ、そして昨年のカブスも鉄壁のリリーフ陣を擁していた。

普段とは違う起用法に適応した平野の凄さ、MLB強打者にも「間違いなく通用する」

 プレーオフやトーナメントのような短期決戦の場合、打者の視点から見ると、タイプの違う初対戦投手を1イニングずつ小刻み継投されると「本当に嫌なもの。なかなか特長がつかめなくて苦戦するんだよ」と岩村氏は話す。

「同じリーグでプレーしているならまだしも、国際大会でまったく情報がない投手。これは難しい。日本はそれを利用して、相手打線をうまく抑えることができている。さらに、中継ぎ陣はWBC球にも対戦打者にも、しっかり適応できている。マウンド上で普段通りのピッチングができている。これはデカイ。その中でも、平野の存在は大きいね。

 普段オリックスでは抑えを任されているのに、侍ジャパンでは中継ぎの1番手か2番手でしょ。抑えは出番が9回と決まっていて、そこに合わせて肩を作ればいい。でも、今のポジションは、第2先発と一緒でその日の先発投手の調子によって、出番が3回になるかもしれないし、5回になるかもしれない。いつやってくるか分からない出番に合わせて準備をするのって、まったく違うから。想像以上に繊細な部分だと思うよ」

 2次ラウンド第1戦のオランダ戦では、4回に2番手として登板し、3者凡退に斬って試合の流れを一変させた。そして、第2戦のキューバ戦でも5回にマウンドに上がると、1番・サントスを皮切りに3者凡退。相手の攻撃の芽を摘む“ストッパー”として大活躍だ。

「真っ直ぐ、フォーク、スライダーを上手く使って、打者に狙いを絞らせていない。平野の大きく落ちるフォークは、決勝ラウンドに進出してメジャーの強打者たちと対戦することになったとしても、間違いなく通用する球。あのフォークがあれば、150キロ台の真っ直ぐとフォークのコンビネーションだけでも怖いよね。さらに、スライダーでカウントを取りにいけるんだから、これは手強いよ」

「好投に打線が応える素晴らしいチームワーク」、指揮官と選手の信頼感も勝因に

 中継ぎ陣が試合を立て直し、流れを引き寄せたとしても、打線が得点を挙げなければ、勝利にはつながらない。侍ジャパンは、特に2次ラウンドが始まって以降、投打がかみ合い、互いに互いを引き上げるような試合展開を見せている。

「キューバ戦で日本が5回以降に挙げた6点は、中継ぎ陣がもたらしたもの。好投に打線が応える素晴らしいチームワークだね。1次ラウンド第1戦から比べると、このチームワークは試合を重ねるごとに強まっている。小久保監督のやりたい野球ができているんじゃないかな。

 その象徴でもあったのが、8回に2安打していた小林の代打に内川を送り、内川がその期待に応えた場面。『任せた』『任された』っていう小久保監督と内川の間にある信頼感が最高の結果を生み出したね」

 15日の第3戦イスラエル戦に勝利すれば、侍ジャパンは6連勝で文句なしの決勝ラウンド進出を決める。今大会最大のダークホースとも言えるイスラエルを撃破して、自力でロサンゼルス行きを勝ち取りたい。

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