【電線総合商社・泉州電業の経営戦略】西村元秀社長「21年、経常益50億円目指す」 海外事業強化3年後にアジア新拠点

 泉州電業(本社・大阪府吹田市、社長・西村元秀氏)は、1947年創業、49年設立の独立系電線総合商社。業界トップクラスの業容で、東証第二部上場企業。従業員が523人。西村社長は「これまで電線を核とした技術商社として、多彩な領域にチャレンジしてきた。今期から5カ年中期経営計画がスタート、最終年度の21年10月期には売上高1千億円、経常利益50億円を目指したい」と話す。西村社長に話を聞いた。(白木毅俊)

泉州電業・西村社長

――16年11月~17年1月期連結決算は売上高181億4300万円で前年同期比2・7%増、経常利益8億3700万円で同19・5%増でした。

「昨年11月の米国大統領選後に銅相場は急騰、為替もドル高に振れた。70万円前後という銅価の水準に、販価是正が追い付かなかった。売上高の約30%を占めるエンドユーザー向けの直需は工作機械・産機、自動車設備、半導体・液晶設備製造などが好調。半導体は当面、好調を維持するだろう。一方、建設電販と称する、約50%を占める電設資材販売業者向けの電材および約20%の電気工事業者向け電設需要は、まだあまり強くない。しかしながら、期の後半からは首都圏中心に東京オリンピックなど大型物件も立ち上り、増収が見込めそうだ。業績に影響する銅価は、当分強いと思う。今期は3カ月が終わったばかりだが、通期でも増収増益を予想しており計画を達成したい」

――業界トップクラスの業容です。強みは?

「事業所は国内16拠点、子会社は国内が6社、海外が5社(中国・台湾・タイ・フィリピン)。三つのビジネスモデルを持つことが強みだ。『ジャストインタイム体制』では、総床面積約5万平方メートルの倉庫に常時5万品種以上、総額では約40億円の商品をストックしている。必要な時に必要とされる量を即納可能な物流配送システム体制を持つ。全国400社以上の電線メーカーの内で250社と取引があり、ほぼすべての電線がそろう」

「2点目がFA用ケーブルなど『オリジナル商品』を持つことだ。メーカーと共同で市場を開拓してきたもので、当社でしか購入できない電線もある。3点目が『ケーブルアッセンブリ』。国内16拠点の内8カ所は加工場設備を併設し、ユーザーニーズに応じた加工を行う。3モデルが収益に大きく寄与、このビジネスモデルは各部門の協力体制が基本であり、従業員のまとまりも良い。全国のどこでも、顧客に泉州電業らしいサービスが提供できる」

「国内の連結子会社は通信関連商社の太洋通信工業、アップルコンピュータ正規代理店のエステック、大電流コネクター設計・製造・販売のエヌビーエス、自動車製造ライン制御盤組み立てのアシ電機などそれぞれの分野で実績を上げてきている」

――海外事業は?

「海外事業は強化する。海外の売上高比率は現在3%だが、将来的に30%へと高めたい。ハーネス加工を目的としたフィリピンの現法は14年の設立で、ラグラナ州サンタロサ市の工場で15年春から生産を始めた。フィリピン国内での現地販売権を取得、販売活動を開始した。人員は40人から1年後には100人へと増員する。中国は上海、天津、広州の3拠点。タイはアユタヤを閉め、バンコク市内に販売業務を集約している最中。16年設立の台湾の販社も立ち上がりつつある」

「アジアでの拠点設立では、3年後をめどにベトナムかインドネシアにも進出したい。アジア地域の需要を取り込みつつ成長するのが我々の経営戦略であり、日系企業へは日本国内と同一のサービスを海外で提供できる利点をPRしていく。インドやミャンマー、あるいはアメリカについても進出の可能性を探る。アメリカはトランプ大統領が就任したからではないが、自動車関連のウエートが高い当社が米国の現地で加工するビジネスモデルは十分に成り立つと思う」

――5カ年中期計画については?

「数値目標を発表したのは、実は今回が初めて。21年10月期に売上高1千億円、経常利益50億円、ROE6・0%以上を目指す。オリジナル商品の開発、ジャストインタイムの徹底、関東圏の営業強化などがその核になる。並行して人材育成も進める」

――M&Aは?

「国内の企業買収はなかなか難しいと実感している。海外におけるM&Aは有効な手段で、是非良いパートナーを見つけたい。ケーブル業界の統合・提携は10年前から進行しているが、今後も続くと見ている」

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