《ブラジル》19年越し、下院が派遣法を承認=対象は全ての職種、分野に=連立与党からの造反議員多く、今後の政権運営に不安も

22日の下院採決の様子 野党議員は「つけ」を暗喩するアヒルの人形を掲げて抗議した。「失政のつけを労働者にまわすな」と主張している(Foto Lula Marques/AGPT)

 ブラジル連邦下院が22日夜、全ての企業活動において派遣労働者の採用を認める法案(以下、派遣法)を、賛成231票、反対188票、欠席8で可決したと22、23日付現地紙・サイトが報じた。
 同法案の基本骨子は、「派遣労働を、全ての企業活動において認める」「派遣労働者の契約・管理、給与支払いは派遣会社が責任を持つ」「労働者の安全、衛生は、委託会社の責任とする」「期間限定の派遣労働者の契約期間は原則180日間で、90日までの延長が可能。また同期間は連続していなくてもよい」「期間終了後、同じ種類の職場で働くためには3カ月の期間を空けなくてはならない」の4点だ。
 派遣労働は、民間はもちろんのこと、判事、検察、警察などの例外を除き、公務員、公社の労働にも認められる。
 野党の提出した六つの修正動議は全て棄却され、これで派遣労働法案はテメル大統領(民主運動党・PMDB)の裁可を待つのみとなった。
 反対票を投じた188人の議員の中には、民主社会党11人、民主運動党10人など、政権与党側の議員も多数いた。民主党、進歩党、共和党、社会民衆党、社会民主党からも反対議員が出ており、与党議員からの反対票は56に達した。
 今回承認された派遣法は1998年に議会に提出されたもので、一旦は下院を通過したが、上院が変更を加えたため、下院で再承認を待つ状態が02年から続いていた。下院は15年にも同様の内容の別法案を承認したが、法案は上院に送られたまま未採決だった。
 ロドリゴ・マイア下院議長は、15年から上院での承認待ちだった法案を脇に置き、02年から下院での承認待ちだった法案に乗り換えて22日に通過させた。報道各社は「19年前の法案がようやく通過」と強調している。
 これまでは、派遣労働を明確に定義し、条件や規制を定めた法律は存在しておらず、労働裁判所の判例に従って、派遣労働を企業活動の補助的業務に限定。派遣労働者が主幹業務に就くことは認められていなかった。
 今回承認された派遣法をテメル大統領が裁可した場合、派遣労働が認められる分野に制限はなくなる。
 派遣法報告官のラエルシオ・オリヴェイラ下議(連帯・SD)は、原案に入っていた「企業への負債、罰則、罰金の恩赦」の項目を削除したことについて、「労働者の権利を奪う項目は全て削除した」と語った。
 反対勢力の自由と社会党下院リーダー、ブラウベル・ブラガ下議は、派遣法は派遣労働者の権利を守るものではなく、労働者の権利を不安定にするものに過ぎない」との不満を口にした。

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