“球界の人気者”やGG受賞選手、HR王も…テスト入団から這い上がった選手たち

もう間もなく幕を開ける今季のペナントレース。今年も各チームの選手たちがさまざまなストーリーを生み出し、ファンを魅了する。スター選手として大きな期待をかけられる選手、復活を期する選手、今年こそはという想いとともに飛躍を目指す選手、そして新たにプロ生活に飛び込む選手など、さまざまな選手たちが、さまざまな物語を生み出す。

日本ハム・杉谷拳士【写真:田口有史】

今季も多数が厳しい道へ、入団テストから夢を掴んだ選手たち

 もう間もなく幕を開ける今季のペナントレース。今年も各チームの選手たちがさまざまなストーリーを生み出し、ファンを魅了する。スター選手として大きな期待をかけられる選手、復活を期する選手、今年こそはという想いとともに飛躍を目指す選手、そして新たにプロ生活に飛び込む選手など、さまざまな選手たちが、さまざまな物語を生み出す。

 スター選手たちに目を奪われがちではあるものの、その脇を固める選手たちに注目するのも、プロ野球の楽しみ方の一つ。今回は、スター街道を歩んできたわけではなく、「テスト入団」という異色の形でプロに飛び込んだ選手たちを紹介したい。

 1人目は、身長167センチと小柄ながら3年連続で50試合以上に登板し、プロ生活8年での一軍登板試合315試合を数える、北海道日本ハム・谷元圭介投手。日本シリーズでの「胴上げ投手」にもなった昨年は、自己最多となる28ホールドをマークするなど、今やチームに欠かせない存在となっている。しかし、彼は三重県の稲生高時代は甲子園未出場、中部大学時代も注目されることはなかった。バイタルネット入社後は一般社員と同じく仕事をしながら野球を続けていたが、2008年に北海道日本ハム主催の入団テストに見事合格し、その年のドラフト7位で入団したというストーリーを持つ。

 谷元が参加した2008年の入団テストに、もう1人自らの手でプロへの道を掴んだ男がいた。昨年、背番号が2へと変更したムードメーカー、杉谷拳士選手である。

異色の経歴を持つハム大嶋、ロッテ岡田も苦難乗り越えてプロ入り

 彼は東京の名門・帝京高校から社会人野球へ進路が決まっていたが、プロへの思いを断つことができず、入団テストに参加。持ち前の明るさや、スイッチヒッターであったことなどが首脳陣の目に留まって見事入団テストに合格し、その年ドラフト6位で入団した。内外野どこでも守れる器用さに加え、近年では敵地・メットライフドームでのウグイス嬢特別アナウンスが話題となったり、数多くのバラエティ番組に出演するなど、野球という枠を超えた人気者となっている。

 また、早稲田大ソフトボール部からプロ野球という異色中の異色となる道を選んだのが、大嶋匠選手。大嶋は中学から大学までソフトボールをやっており、硬式野球の経験はなし。早稲田大ソフトボール部に所属していた2011年、すでに社会人野球の硬式野球部で練習も行っていたが、本人も「記念受験」として北海道日本ハムの入団テストを受けると、結果、プロとして入団。昨年2軍では3割を超える成績を残し、1軍では、プロ初安打プロ初打点をマークするなど徐々に実力をつけている。

 北海道日本ハム以外では、華麗な守備で観客を魅了し続けている千葉ロッテ・岡田幸文選手も入団テストに合格し、プロへの道を掴んだ男である。岡田選手は大学入学直後、肘に全治1年を超える大怪我を負い、失意のまま大学中退。その後2004年からは給食センターで働きながら、全足利クラブというクラブチームで野球を続けていた。

 2006年には左手首の骨折や右膝半月板損傷の怪我を負う苦難を味わうが、プロの道を諦めず、努力を続けた結果、2008年に入団テスト合格。同年育成ドラフト6位で入団した。育成枠からのスタートとなったが、2011年には育成選手出身としては初となる全144試合出場、41盗塁も記録している。持ち前の俊足を生かした守備も磨きがかかり、2011年、2012年と2年連続でゴールデングラブ賞を受賞している。

自由契約後にテスト入団で新天地へ、「掘り出し物」となった選手も

 彼らのようにアマチュアからプロ入りを果たす選手たちの入団テストのほかに、他球団を自由契約となった選手の実力を試すための「入団テスト」も存在する。

 千葉ロッテのチェン・グァンユウ投手が、その一人である。チェンは2011年に台湾のアマチュアから横浜DeNAベイスターズに入団するも、思うような結果を残せず、2014年に戦力外通告を受ける。しかしその年の11月、千葉ロッテの秋季キャンプで入団テストを行い、見事合格。2015年シーズンからピンストライプのユニフォームに袖を通すこととなった。

 横浜DeNA時代は1軍登板は1試合のみであったが、千葉ロッテ入団後の初年度には14試合に登板し、終盤の9、10月だけで3勝をマークするなど、計5勝。昨年はなかなか登板機会に恵まれなかったものの、9月の登板でチームの先発左腕シーズン初勝利を記録し、存在感を示した。

 また、外国人選手に関しては「テスト生」の扱いで入団テストを行い、首脳陣自らの目で判断する球団もある。かつて北海道日本ハムに所属していたミチェル・アブレイユ選手は、2013年の春季キャンプにテスト生として参加し、入団テストに合格した。シーズンでは主にクリーンアップを任され、その年いきなりホームラン王、ベストナインに輝く活躍を見せた。翌年は怪我の影響で思うような成績が残せずに帰国を余儀なくされたが、まさに「掘り出し物」となった一例だろう。

今年も数多くの選手が入団テストを経て厳しい戦いへ

 他には、オリックス、阪神、横浜DeNAで活躍したアーロム・バルディリス選手も、来日前から日本野球に強い関心を持ち、2008年に阪神のテスト生としてキャンプに参加。見事合格を果たし、育成選手としてプロ野球のキャリアをスタートさせた。

 2008年5月に支配下登録されながら2年で戦力外通告を受けてしまうが、オリックスに入団してからは打撃の好不調が少なくなり、安定した成績を残せるように。千葉ロッテ・岡田とともに育成出身選手初となる規定打席到達を果たし、2010年には自身初となる打率3割超え、2011年には18本塁打、2013年には自己最多となる91打点を挙げる活躍を見せた。

 甲子園で活躍したり、大学野球で名を挙げたりするなど、メディアの注目を浴びながら入団する選手もいれば、彼らのように自ら球団にアピールしてプロへの道を切り開く選手もいる。今年も久保裕也投手(楽天)、柴田講平選手(千葉ロッテ)、猪本健太郎選手(千葉ロッテ)、三家和真選手(千葉ロッテ)、ヘルメン投手(オリックス)、育成選手として契約したジョージ選手(オリックス)など、数多くの選手が入団テストを経て、厳しい戦いに身を投じている。

 まさに「ハングリー精神」で這い上がった選手たちが、いかに存在感を示すことができるのか。テスト生出身選手たちにも、注目をしていきたい。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」編集部●文

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