肝油ドロップの食べ過ぎは悪影響?「1日1個」制限の理由

なぜ肝油ドロップが出され、なぜ1日1個までだったのか。肝油ドロップの栄養素とメリット、食べ過ぎによる過剰症などの健康リスクについて解説します。

「肝油ドロップ」の栄養素・メリット……胃が小さく育ち盛りの幼児に

お菓子のようにおいしい肝油ドロップ。保育園などから帰る時に配られていた思い出がある方も多いかもしれません。

身体の小さい幼稚園や保育園に通う子供たちは、身体をよく動かすことに加え、成長のための栄養が必要です。しかしまだ胃も小さく、1日3食の食事だけでは必要な栄養素を十分に摂ることができません。その不足分を補うために食べさせていたのが「肝油ドロップ」です。

名前にもある「肝油」とは、マダラやスケトウダラなどの肝臓から分離した油のこと。以前は、これに砂糖を加えて固めていたようですが、現在はビタミンAとビタミンDを混ぜ合わせて、植物由来の天然増粘剤で固めて作られています。

栄養素としては1粒あたり4kcal、ビタミンA 200μg、ビタミンD 1.7μgが含まれています。ビタミン・ミネラルは不足しがちな栄養素ですが、その中でもこれらの成分は子供たちの成長には大切なものです。

「不足分を補うのが目的なら、おいしいのだし、1日1個なんてもったいぶらなくてもいいんじゃないか」と思う人もいると思います。それがそうもいかないのです。肝油ドロップ……だけに限りませんが、特定の成分を摂り過ぎてしまうと、身体に悪影響を与えてしまうことがあるからです。

肝油ドロップ食べ過ぎによる過剰症……「1日1個」とされる理由

肝油ドロップを食べ過ぎると身体にどのような悪影響を与えるのでしょうか。

実は、肝油ドロップに含まれるビタミンAとビタミンDはどちらも「脂溶性ビタミン」の仲間。脂溶性ビタミンとは脂に溶ける性質を持つビタミンで、体内で使われなかった分を蓄積することができます。そのため、蓄積分が多くなりすぎると「過剰症」という悪影響がでます。

ビタミンAの過剰症

頭痛、顔面紅潮、皮膚の乾燥、筋肉痛、食欲不振、関節痛、皮膚色素沈着、脳圧亢進、急性中毒、胎児奇形、仮性脳腫瘍、吐き気、嘔吐など

ビタミンDの過剰症

食欲不振、吐き気、頭痛、皮膚のかゆみ、腹痛、筋緊張低下、脱水症、下痢、便秘、多尿、腎石灰化、腎不全、尿路結石、高血圧症、不眠など

どちらも、一気に食べてしまったのが1回だけであれば、一過性の症状のみで済みますので、「今日は3粒も食べていた!」といった場合でも、過剰な心配は不要。子供の場合は「1日1個って言ったでしょ?」と小言のひとつも言われれば、次からは盗み食いなどはしなくなるでしょう。

サプリメント等による「過剰症」……肝油ドロップ以外も注意

「過剰症」の問題は、実は大人の方にあります。大人で肝油ドロップを食べる人は多くないでしょうが、多種類のサプリメントを愛用することで、何かしらの成分を過剰に摂取してしまうことがあります。つい色々試したくなる気持ちは分かりますが、サプリメントを使ったためにかえって身体に負担をかけてしまうことも多いのです。

過剰症を起こす水溶性ビタミン・脂溶性ビタミン

肝油ドロップに含まれていたのはビタミンAとビタミンDでしたが、他にも過剰症を起こすものを一覧表にまとめています。

過剰症を起こす水溶性ビタミン・脂溶性ビタミンの一覧

先にも説明したとおり、脂溶性ビタミンは脂肪に溶けるため、体内の脂肪に溶け込んで蓄積されます。一方、水溶性ビタミンは水に溶けるので、過剰に摂取しても尿中に排泄され過剰症はないとされてきました。しかし、昨今のサプリメントブームで一部の水溶性ビタミンにも過剰症があることが知られるようになっています。

過剰症を起こすミネラル類

また、ミネラル類も欠乏症と過剰症がありますので、一覧表にまとめておきます。

過剰症を起こすミネラル類の一覧

ビタミンもミネラル類も日本人の一般的な食生活を送っていれば過剰症の心配はありません。「健康的な」食生活を送っていれば、欠乏症も神経質になるほど心配する必要はないと考えていいでしょう。

もっとも深刻な問題となりやすいのは、サプリメントを使用する場合の過剰症です。サプリメントは専門家の指示を仰ぎ、用量・用法を守って使用することが大切です。

■参考文献

日本人の食事摂取基準 2020年版

湧永製薬株式会社  ホームページ

平井 千里プロフィール

メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。

(文:平井 千里(管理栄養士))

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