51歳住宅2軒目を建て貯金がなくなる。老後破綻が心配

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、50代で同居を解消し、結果的に貯蓄を大きく減らした50代の女性会社員。ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんが担当します。

貯蓄も底をつき、教育資金、老後資金ともに心配です

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、50代で同居を解消し、結果的に貯蓄を大きく減らした50代の女性会社員。ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんが担当します。

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相談者

リンリンさん

女性/会社員/51歳

山口県/持ち家一戸建て

家族構成

夫(会社員/52歳)、長男(大学2年・私立理系/19歳)、長女(公立高校3年/18歳)

相談内容

結婚後実家の隣に新居を建て敷地内同居をしていましたが、親との関係が悪化し、同居を解消しました。やむなく私のヘソクリで土地から購入して2軒目の家を建てて別居しました。結果、私の貯金はほぼ底をつきました。しかも、その直後に夫が昇進して部署が移動になり、残業がなくなって月15~18万円の減収。今更ですが、教育費のピークを目前にして貯蓄を大きく減らしてしまい、もし、どちらかが病気やケガで働けなくなったりしたら…と不安になってきました。娘たちを大学に行かせた後、老後資金を準備できるでしょうか。銀行定期だけではダメだと証券口座を作って投資信託を始めてみたりと、あれこれ考えてもみましたが、どうすればよいのかよくわかりません。

家計収支データ

「リンリン」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)住宅ローンについて

借入額2500万円、2015年1月から20年返済、10年固定、金利0.98%

(2)車両費の内訳

ガソリン2万7500円、駐車場代5000円、保険5000円、税金4000円

(3)教育費の内訳

長男授業料/150万円(年間)、長女学習塾/3万4000円、長男通学費/1万円

(4)雑費の内訳

医療費2万円、新聞代3000円、他

(5)保険料3万円の内訳

・夫/終身(終身500万円、定期特約1500万円、医療特約・入院5000円)=保険料1万657円

・夫/終身共済(60歳払済み、病気死亡500万円)=保険料7088円

・夫/定期(死亡1500万円※グループ保険)=保険料3135円

・妻/定期(死亡500万円※グループ保険)=保険料685円

・妻/医療共済(死亡50万円、入院5000円、他に手術・入院・先進医療特約)=保険料2215円

・家族全員/傷害(保障不明、他に個人賠償1億円)=保険料1600円

・家族全員/がん(診断給付金・夫100万円/他60万円、入院・夫1万5000円/他1万円、他に通院給付金、死亡保障・夫150万円/他100万円。保険期間夫婦90歳まで、ただし65歳以降保障半額)=4651円

(6)教育費について

長女は奨学金利用を考えている。

(7)確定拠出年金

妻の毎月定期に積み立てている12万3000円のうち、2万3000円は確定拠出年金の積み立てに切り替える予定。

FP平野泰嗣からの3つのアドバイス

アドバイス1 教育費で貯蓄は減るが家計でカバーできる範囲

アドバイス2 退職金は、住宅ローン完済の原資に

アドバイス3 住宅資金に使ったことは意味のあること

アドバイス1 教育費で貯蓄は減るが家計でカバーできる範囲

いろいろ資金面でご心配されていますが、結論から言いますと、今後の家計やマネープランにさして大きな問題はありません。ご主人の残業代が減り、奥様の貯蓄が住宅購入で大きく減って、教育費のピークがこれからということを考えれば、確かに不安になる気持ちもわかります。それでも、教育資金も老後資金も、基本的に困るようなことはないと考えていいでしょう。

まず、教育費についてですが、来年長女様が大学に入学すると、年間教育費は300万円を超えるはず。2015年、年間180万円の貯蓄が出来ていて、2016年は、長女様の教育費の増加分120万円(40万円の塾代が初年度160万円の大学費用に変わる)を加味しても、家計は赤字になりません。長女様の教育費が年間160万円としても、年間60万円の貯蓄ができる計算になります。

それでも、手元の貯蓄残高に不安を感じるようでしたら、日本学生支援機構の「第二種奨学金(利息付)」を利用してもいいと思います。金利は0.2%(「利率見直し方式」選択の場合)ですので、早めに返済していけば、支払利息はそれなりに抑えられるはずです。

アドバイス2 退職金は、住宅ローン完済の原資に

老後資金についても、今のペースで家計管理をしていけば、さほど心配はいらないでしょう。お子様が2人とも大学を卒業し、教育費をそっくり貯蓄に回せば、年間400万円前後の貯蓄も可能となります。それがご主人57歳のときとすれば、60歳の定年まで4年間で1600万円、今の貯蓄に上積みできます。

また、老後資金づくりとして確定拠出年金※を始めるのも、たとえばNISA口座を利用して、投資をしていくのもいいと思います。どちらにしても、現状で10万円は定期預金に積み立て、残りを運用するわけですから、リスクとして許容範囲の額でしょう。

※確定拠出年金に関しては、積立期間が8年以上10年未満となるので、受給開始が61歳以降となる

それと、保険についてですが、詳細に必要保障額を試算すれば見直しが必要な部分もあるかもしれません。しかし、奥様がやや心配症という点を考慮すれば、必要以上に掛け金の高い保険にも加入していませんし、とりあえずは現状のままでいいのでは。定年が近くなった時点で、定期保険・定期特約を中心に見直しをしてもいいと思います。

アドバイス3 住宅資金に使ったことは意味のあること

そもそもリンリンさんがご自身の貯蓄を大きく減らしたのは、2軒目の家を建てられたからですが、人生で2軒の家を建てるということは、資金的にそう簡単にできることではありません。逆に言えば、それができるほど、しっかりと家計管理をし、貯蓄していたということです。

本来、その貯蓄は老後資金と考えていたわけですが、それを今の生活のために使ったということ。どうしても必要な支出だったという点では同じです。同居解消の詳しい事情はわかりませんが、リンリンさんも我慢を重ねた上での決断だったはず。その意味で、意義ある使い方をしたのだと考えるべきでしょう。

ただし、それまで住んでいたご自宅は、どうされたのでしょうか。空き家状態であれば、少々もったいない気がします。たとえば、人に貸してその賃料は親御さんに渡して上げるとか。活用できる方法を考えてみてはどうでしょうか。

最後に、今回相談されるにあたり、そのデータ作りのために、ご主人といろいろコミュニケーションを取られたと思います。それによって家計状況がより明確になったのは良かったのではないでしょうか。老後を迎えるにあたり、今後さらに話し合う機会が増えていくことが望ましいと考えます。

教えてくれたのは……

平野 泰嗣(ひらの やすし)さん

ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタントとして活躍。FPの妻と2人でFPオフィス Life & Financial Clinicを創立し、「自分らしく生きること」をモットーにライフ・ファイナンス・キャリアの3つの視点でのアドバイスをする。中小企業診断士として経営者・従業員のライフプラン支援も行っている。著書に『30代夫婦が働きながら4000万円の資産をつくる 考え方・投資の仕方』(明日香出版社)。All Aboutマネーの連載『ふたりで学ぶマネー術』も人気

取材・文/清水京武

(文:あるじゃん 編集部)

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