47歳、貯金1600万円。夫がうつ病で共倒れになりそう

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、ご主人がうつ病を患い、自分自身も心身がきびしくなってきた40代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします

家族を支えるために早期リタイヤは可能でしょうか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、ご主人がうつ病を患い、自分自身も心身がきびしくなってきた40代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

相談者

バイオレットさん(仮名)

女性/公務員/47歳

岡山県/持ち家一戸建て

家族構成

夫(会社員/51歳)長女(大学2年/21歳)、長男(高校3年/18歳)

相談内容

事情があって平成26年度から別財布で家計管理を行っています。家のローンは22年に7年間で完済しました。そのため教育費が心許なく、授業料はその時のボーナスでの対応となります。長男が専門学校卒業予定の平成31年3月をめどに完全リタイヤを考えています(夫は60歳定年まで勤務予定。再雇用は希望していません)。現在、生活費は夫から13万3000円を、教育費はボーナスから折半で負担してもらっています。リタイヤの理由は、夫がうつ病で、このままでは共倒れになりそうだからです。リタイヤ後の生活(老後生活)について、可能かも含めてアドバイスを頂けないでしょうか。

家計収支データ

「バイオレット」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)ボーナスの使いみち

教育費125万円、旅行30万円、小遣い20万円、貯蓄・夫20万円、貯蓄・妻10万円、財形年金・夫10万円、財形年金・妻30万円

(2)保険料の内訳

[夫]

●がん保険(終身払い終身保障、入院3万円、診断給付金200万円※60歳から半額)=保険料2670円

●定期保険(保険期間59歳まで、死亡保障3000万円、医療特約入院5000円付き、他に手術、障害、災害特約付き)=保険料2万2000円

●団体保険1(定期タイプ、死亡保障3500万円、医療特約入院9000円付き)=保険料1万4250円

●団体保険2(年金タイプ、保険期間20年、死亡保障月10万円、ボーナス時50万円)=毎月の保険料6214円・ボーナス時2万5000円

[妻]

●がん保険(終身払い終身保障、入院3万円、診断給付金200万円・医療特約入院5000円※60歳から半額)=保険料2280円

●団体保険(定期タイプ、死亡保障1000万円、医療特約入院4000円付き)=保険料5300円

●団体保険(年金タイプ、保険期間20年、死亡保障月10万円=毎月の保険料4414円

●共済(定期タイプ、死亡保障1000万円)=毎月の保険料2400円

[長女]

●共済(定期タイプ、死亡保障2000万円、医療特約入院5000円・がん特約付き)=毎月の保険料3590円

[長男]

●夫の団体保険1の特約(定期タイプ、死亡保障1000万円、医療特約入院5000円付き)=毎月の保険料2880円(24歳終了)

(3)家族の小遣い「8万6000円」の主な内訳

夫/4万8000円、妻/3万円、長女/5000円、長男/3000円

(4)教育費について

毎月の4万4000円は主に定期代とお弁当を作れないときのお昼代、学級費や教科書代など。授業料などはボーナスより捻出。昨年ボーナス時125万円の内訳は長女大学授業料53万5800円(年間)、長男専門学校入学金42万円(前払い)、長男前期授業料(前払い)34万円、他に長女自動学校32万円(※不足分は妻の貯蓄より捻出)

(5)夫に関わる雑費

夫の給与から財形貯蓄や保険料を差し引き、さらに生活費13万3000円を差し引き、残った額の約3分の2は貯蓄。残りは本人の医療費(月平均1万~1万5000円)や散髪代などに充てている。

(6)退職金と公的年金

[夫](定年見込み)

退職金/1800万円、公的年金/年200万円

[妻](平成31年退職時)

退職金/1500万円、公的年金/年159万円

(7)夫婦別会計の理由

(相談者コメント)「夫のうつが原因で、別居していた期間があります。主人の実家と私の折り合いが悪くなっており、私がお金の管理をすべてしているのが気に入らず、もめたことがあるため。夫はもともと、家計管理に興味はなく、病気のこともあり、家計管理は負担になります」

FP深野康彦からの3つのアドバイス

アドバイス1 教育資金は現状で問題なくクリア

アドバイス2 老後資金は今後3年間の貯蓄が大事

アドバイス3 ご主人と資金の出し方を話し合いたい

アドバイス1 教育資金は現状で問題なくクリア

相談者のバイオレットさんの場合、定年間近にいくつかの不安要素が集中してしまったわけですが、ひとつひとつ整理して考えてみましょう。

まず、教育資金については、バイオレットさんが言われたように、住宅ローンを繰上返済したことによって手持ち資金が減ったことが、不安要因となってしまいました。繰上返済は、住宅コスト削減の有効な手段ではありますが、時期と金額が大事なポイント。一気に行うとその後のキャッシュフローがきびしくなり、ライフプランに影響してしまう場合があるからです。

とは言え、老後資金となる年金財形を除いた現在の貯蓄額は725万円。一方、2人のお子さんに今後かかる教育費のうち、授業料は280万円(長女/約54万円×2年間、長男/1年目後期34万円+2~3年目全期136万円)ほど。今のところ、授業料の支払いはボーナスに依存していますが、仮にボーナスがなくても、貯蓄だけでカバーできますので、ほぼ心配は無用と言えるでしょう。

アドバイス2 老後資金は今後3年間の貯蓄が大事

次に老後資金を考えてみます。まず、バイオレットさんがリタイヤされる3年後までは、現在とほぼ同じ貯蓄ペースが続くとします。すると、3年間で計1000万円が貯蓄に上乗せされます。これは相当な貯蓄ペースですが、実はこれが老後の大きな支えになりますので、頑張って達成してほしいと思います。

では、リタイヤ後はどうでしょうか。ご主人が、どの程度家計負担をするかは不確定ですが、現在と同じ月13万3000円とすると、夫のお小遣いと保険料を本人負担としても、月5万円ほど不足します。年間では60万円となりますから、ご主人が定年を迎えるまでの5年間で300万円。小さい額ではありませんが、それまでの貯蓄から十分カバーできます。

次に、ご主人が定年を迎えてから65歳になるまでの、いわゆる無年金期間を試算してみます。想定される生活費は、現在の普段の生活費から考えて月額18万円ほど。5年間で1080万円。このうちご主人の個人年金保険が年額60万円支給されますので、それを生活費に充てることができたとして、残り780万円を貯蓄でまかなうということになります。それでも、それまでに大きな支出なければ、ご主人60歳の時点で2000万円前後の貯蓄と退職金(夫/1800万円、妻/1500万円)が残ることになりますから、これも心配は要りません。

ご主人が65歳を過ぎれば、公的年金が受け取れます。そのうち、どの程度を生活費に充てるのかがわかりませんが、ご夫婦で合算して生活資金とするならば、月額30万円。先に記した定年後の生活費ならば、この金額は十分です。それどころか、公的年金から毎月、貯蓄することも可能。さらに、年金財形の積立分も十分まとまった額がありますから、住宅のリフォームやクルマの買い替えについても、その費用は十分にあると言えます。

アドバイス3 ご主人と資金の出し方を話し合いたい

結論としては、教育資金も老後資金も、そう心配は要りません。早期リタイヤは十分可能だと思います。

注意点を上げるとすれば、2点。まず、ご主人とどのような形で、老後の生活費を出し合うのかを事前に話し合っておきたい。いろいろ難しい部分もあるでしょうが、ここが不透明ではより現実に即したマネープランが立てられません。焦る必要はありませんが、意識はしておいてください。

もう1点は、バイオレットさん自身の健康です。これまでも肉体的疲労やストレスがかなりあったはず。今後は無理をせず、健康管理には十分努めてください。余暇を楽しんだり、気分転換をしたり、そしてそのための時間を作ることに資金を使う。それもまた有意義なお金の使い方のはずです。

最後に保険について。気にされているとおり、やはり「掛け過ぎ」です。

バイオレットさんが加入されているものについては、現時点で団体生命の年金タイプと共済は不要だと考えます。それでも、もう1本の団体生命保険で1000万円の死亡保障が残ります。お子さんの教育費をカバーすることを目的とするのならば十分でしょう。

ご主人の保険については見直ししにくいとのことですが、定期保険はかなり割高です。59歳まで加入すると、今後支払う保険料は200万円を超えます。これをどう考えるかです。見直すなら、死亡保障は半分程度に減額、医療特約は解約していいと思います。

相談者「バイオレット」さんから寄せられた感想

アドバイスについてありがとうございました。ライフプランを見直してきましたが、素人一人の考えでは不安がありましたが、専門家の方にご意見をいただき、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。早期リタイアも可能と知り、漠然とした不安を払しょくすることができました。家族みんなでこれからも健康に留意し、リタイアするまでは貯蓄に励み、保険についても、主人と話し合いをもって見直しを考えていきたいと思います。ありがとうございました。

教えてくれたのは……

深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

(文:あるじゃん 編集部)

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