教育費が高く、返済に年間200万円。家計改善の方法は?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、貯蓄ができないまま2人のお子さんを育てる40代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんが担当します。
相談者
ゆえんでぃさん(仮名)
女性/専業主婦/40歳
東京都/賃貸住宅
家族構成
夫(会社員/43歳)子ども2人(12歳、8歳)
相談内容
現在、貯蓄が0円です。4年前に3000万円現金払いで家を建てました。1000万円は自分たちの貯金を使い、2000万円は両親から無利子で借り、親へは月々8万円の返済、夏冬のボーナス時に52万円、年200万円の返済をしています。完済まで残り6年です。今は転勤に伴い、持家を不動産会社に預け、社宅住まいです。家賃はかかりませんが、駐車場代だけは自己負担です。車のローン月々1万5000円はあと3カ月で完済します。持家はまだ借り手が決まっていないのですが、賃料15万の設定をしています。ボーナスは、親への返済分と、固定資産税(6万円)や自動車税やカード払いの補てんに充てています。私もパート職(月5万円程度)を探しています。現時点で何か無駄な物はありますか?
家計収支データ
家計収支データ補足
(1)教育費
2人とも国立大附属小学校に通っていているため、学費が公立より高い(通学定期代も込み)。習い事は1つだけ。
(2)加入されている保険「4万8000円」の内訳
・夫/養老保険(48歳満期、満期金200万円)=保険料2万円
・妻/養老保険(54歳満期、満期金200万円)=保険料1万8000円
・長男/学資保険(18歳満期、満期金100万円)=毎月の保険料5000円
・次男/学資保険(18歳満期、満期金100万円)=毎月の保険料5000円
(※養老は学資保険代わり。夫は長男、妻は次男の18歳に満期を合わせている)
(3)持ち家について
相談者コメント「持ち家は地方都市に建てました。駅近く築浅ということで相場より高い15万円設定。管理会社に来春まで入居は厳しいかも……といわれていますが、希望者は時々あるそうです(管理会社の審査が通らず、断っているそうです)。夫も焦って不安な人に貸すくらいなら来春まで待って、会社法人で貸したい!と言っています」
(4)転勤期間
少なくともあと10年は戻れない。
(5)児童手当(収支のプラス分)の行く先
積み立てて、冠婚葬祭費用に充てている。
(6)親御さんからの借入れ
両親は返済を滞納してもかまわない、と言ってくれているが、基本的にしたくないとのこと。
FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 貯蓄ゼロから脱するためにいち早く収入アップを
アドバイス2 教育資金も死亡保障も不足する懸念あり
アドバイス3 親への返済を一時的に減額してもらう
アドバイス1 貯蓄ゼロから脱するためにいち早く収入アップを
ご相談者の家計の問題点は、何はともあれ、貯蓄がないということに尽きます。住宅ローン(親御さんからの借り入れ)と自動車ローンを抱えている。ボーナスの行く先はほぼ決まっていて、なかなか貯蓄に回らない。こういった状況で、もしも大きな支出が発生したら……、と考えると、できるだけ早く改善していくべきです。
収入面で言えば、奥様のパート収入と持ち家の家賃収入が期待できる状態です。そのうち、奥様のパートは、1日でも早く始めたいところ。相談文にあるように、月額5万円収入を得られれば、家計状況はかなり改善されます。基本スタンスは、パート収入はすべて貯蓄。月5万円貯蓄できれば年間60万円。貯蓄額は、少なくとも生活費の半年分、こちらのご家族なら200万円程度は確保したい。それもこのペースなら3年とちょっとで達成できます。
家賃収入については、詳しい状況はわかりませんが、文面だけで判断すれば「もったいない」という印象を受けます。確かに焦るのも良くないでしょうが、ずっと空き家であることは、ある意味、資産を減らしているのと同じ。もし家賃の設定が要因ならば、多少引き下げても、家賃収入を得られるほうが得策ではないでしょうか。そのあたりも含め、ご夫婦で管理会社とよく相談してみてください。
アドバイス2 教育資金も死亡保障も不足する懸念あり
次に家計支出について見てみます。
とは言え、改善できる費目はそうありません。月1万5000円の自動車ローンがあと数カ月で完了するとのことですから、それをしっかり貯蓄に回すということ。あとは、雑費や食費など、細かく無駄を減らして行くことくらいでしょうか。しかし、家族のこづかいや趣味娯楽費を削っていることを考えると、これ以上の節約は厳しいとも思えます。
保険は固定支出ですから、見直せば節約効果が高いのですが、見る限り、すべて教育資金づくりのために加入されている。したがって、ここを削ることはできません。
それどころか、保険に関しては、保障が不足しているように思われます。その理由は、住宅資金を親御さんから借りているという点。つまり、団体信用生命保険には加入されていないということ。ご主人に万が一のことがあった場合、住宅ローンはそのまま残ります。そもそも、ご主人の死亡保障が足りません。
定期保険や共済、勤務先で団体保険などがあれば、それも保険料は安いはず。定期保険であれば、保険期間10年、死亡保障2000万円で保険料は月額4000円台後半。コストが増えてしまいますが、この程度は確保しておきたいと思います。
アドバイス3 親への返済を一時的に減額してもらう
もうひとつ、気になるのが教育資金です。現在、養老保険2本と学資保険2本で、計600万円、用意できるように積み立てられています。つまり、1人300万円。大学費用としては、やや不足する懸念があります。
進路によってかかる教育費は大きく変わってきます。国公立大に進めば足りますが、たとえば、私立理系に進学すれば、大学にかかる費用(入学金と授業料4年分)は平均して520万円。さらに、高校で私立に通う、進学塾に通うなど、より教育費が膨れる可能性もゼロではありません。したがって、教育資金はプラス1人100万~200万円は上乗せで備えていくほうが安心と言えます。
そこで、親御さんから借り入れている住宅資金ですが、返済が年間200万円。あと6年で完済とのことですから、その一部が教育資金づくりに回れば、資金づくりの問題は解決できるでしょう。とは言え、現状、貯蓄がないわけですから、たとえば返済をしばらく年間100万円に落としてもいいかと思います。
もちろん、「約束したとおりちゃんと返したい」という気持ちも十分わかります。しかし、たとえば3年間だけで「100万円」減額し、それを全額貯蓄に回せば300万円になります。
その分、完済時期も3年遅れますが、手元に確実に教育資金ができます。また、奥様のパート収入や家賃収入が加われば、確実に教育資金は増え、老後資金づくりにも着手できるでしょう。まずは、いち早く「貯蓄ゼロ」から脱することを考えてください。
相談者「ゆえんでぃ」さんから寄せられた感想
深野先生のご意見有難くおもいます。どうしても親への借金返済を優先したくて、現状に行き詰ったりしておりました。長い人生、もう少し幅をもって、現在の生活を余裕あるものにしたいです。おかげさまでパートの仕事も決まりました。先生のご意見通り、貯蓄にまわして、必要な保険のほうにもまわせるようにしたいです。色々、有難うございました。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/清水京武