38歳、貯金70万円。地方転勤を命じられ家計が火の車

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、住宅ローンと家計赤字に苦しむ30代の会社員の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんが担当します

住宅ローンに食費9万円、車の利用は月3000kmで貯蓄できません

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、住宅ローンと家計赤字に苦しむ30代の会社員の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんが担当します。

相談者

じょあんなさん

男性/会社員/38歳

大分県/持ち家一戸建て

家族構成

妻(パート/35歳)、長女14歳、次女12歳

相談内容

会社の吸収合併後に、地方への転勤が決まりました。実質倒産に伴う吸収だったため、収入は半減しました。また、地方転勤の辞令の際、勤務地からの通勤の制限があり、条件に合う賃貸物件がなく、一戸建を購入しました。クルマも地方生活には必須で、月3000kmは走るため、エコカーでも負担が大きく困っています。妻はパートに出ていますが、子どもの送り迎えに時間を費やし、勤務時間を増やすことができません。

エンゲル係数(食費)が高めですが、勤務先からの購入義務もあり、削減が困難です。育ち盛りの子供がいるので、無駄にはしていないことが、救いです。子どもの教育費は個別指導塾に通っています。東京の教育水準と比較すると、不安になり、削減できていません。結果的に、毎月4万円ほど赤字になっています。前職が倒産した際に、医療保険・学資保険・養老保険は支払いが困難になり、解約済みで、国民共済の死亡保障のみ支払継続中。同時にタバコもやめています。

ともあれ、退職金がない勤務先で、将来の備えもないまま、貯蓄を切り崩しての生活から抜け出せないままで、まったく解決方法が見当たりません。一時最大預金300万円、投資信託100万円ほどありましたが、月々切り崩して、現在に至ります。

子どもの進学も控えてますが、このままでは教育ローン等の利用で借財も増えてしまうばかりではないかと怖い思いです。返済原資もないので、教育ローンの利用もできないかもしれません。アドバイスでもいただきたいというのが率直な気持ちです。

家計収支データ

「じょあんな」さんの家計収支データ

家計収支データ補足

(1)ボーナスの使いみち

20万円が半年分のクレジットの支払いの先延ばし相当分。残りは、毎月の家計のマイナス幅4万円の補てん。

(2)住宅ローンの詳細

・ 3年固定0.89%。

・ 平成27年4月~返済開始。借入期間35年。

・ 3200万円。頭金なし、諸費用全て調達。

・ 過去に繰り上げ返済なし

(3)「車両費5万円」の内訳

・ガソリン代 3万円前後

・自動車保険 8万3440円(3等級)を月割

・車検代 18万円(平成26年12月)を月割

・オイル交換等メンテナンス代半年ごと 1万円弱

・その他(スタッドレスタイヤ代金、他)

(4)クルマの使用について

妻の勤務地、長女の中学校・次女の小学校・長女・次女の学習塾の送り迎えを1台の車でカバー。2台欲しかったが、コストを考えて断念。クルマは親戚から車検代負担で譲ってもらった走行距離9万km近いもの。現在の走行距離は12万5000km。

(5)持ち家となった経緯

当初、勤務地内の社宅があったが単身者向けで、子どもの年齢を考慮し、また飼い犬がいたため住むには現実的ではなく、家賃自己負担で賃貸等も探しましたが、なかなか見つからず、購入に至る。なお、住宅購入時、勤務会社のグループ金融機関の利用を求められたが、恐ろしく地元の労働金庫を利用したとのこと。

(6)保険料の内訳

・夫/共済(事故死亡1225万円、病気死亡425万円、病気入院3000円)=保険料2500円

(7)転職について

書類選考・面接などはすでに行っているが、まだ生活が改善できるには至っていない。相談者は家賃補助等があれば単身赴任もやむなしと考えている。

(8)「勤務先からの購入義務もあり」について

明文化されているわけではなく、社員のノルマとして、グループ会社間で売り上げを維持せざるを得ない、営業スタイルが確立されているのが現状。

FP深野康彦からの3つのアドバイス

アドバイス1 教育費を削減せざるを得ない状況

アドバイス2 転職が現状改善の有効な方策のひとつ

アドバイス3 教育ローンに手を付けるのは危険

アドバイス1 教育費を削減せざるを得ない状況

ご相談内容を拝見する限り、確かに厳しいという実感です。もっとも憂慮すべきは、貯蓄が確実に減っているということです。一時期は400万円ほど貯蓄があり、今はその5分の1。しかも、学資保険や養老保険も解約。このままでは今ある貯蓄が底をつくのも時間の問題です。

家計負担をきびしくした大きな要因は、転勤先での住宅購入だったと思います。頭金なし3200万円を全額借り入れたわけですから、いくら低金利とは言え、大きな負債を背負ったことになります。

効果的な家計改善は固定費の削減ですが、この住宅ローンに関しては手をつけられないのが現状です。新たに手数料が発生することを考えれば、借り換えは現実的ではありません。売却しても、間違いなくローンは残債します。結果、住宅ローンは手を付けられないということになります。

とは言え、どこかで支出を削減しなくては家計改善につながりません。

現時点で可能なのは学習塾でしょう。親として教育費を削るのは心苦しいでしょうが、仕方がないと思います。「東京の教育水準と比較すると、不安になり、削減できていません」とありますが、それでも現状を考えれば、学習塾の優先順位は低いと言わざるを得ません。大変でしょうが親も協力して、自宅で勉強できるよう環境を整えてください。また、塾に支払うコストを削減すれば、送迎の費用や手間もなくなります。

アドバイス2 転職が現状改善の有効な方策のひとつ

実は、ご相談者の収入は決して低いわけではありません。工夫すれば、家族4人でも貯蓄できる水準です。それでも、家計が苦しいのは、一般の家庭ならもっと下げられるコストを下げられないからです。それが車両費と食費です。とくに食費は、本来なら月5万円程度に抑えられるはず。それだけで月の赤字は解消されます。

食費に関しては「勤務先からの購入義務もあり」とのこと。確かに多かれ少なかれ、企業にはそういった部分があるでしょうが、これまでの経緯を考えると、結局、勤務先に家族全員が振り回されているという印象です。もちろん、相談者の方がもっとも感じていると思いますが、およそ優良企業とは言い難いものです。

相談者ご自身もその思いで転職活動されていますが、一刻も早く新しい職場を探すことが、現状打破の有効な方策でしょう。自宅を購入したため、単身赴任も覚悟されているとのことですが、それでも状況が改善されるなら、すべきだと思います。

アドバイス3 教育ローンに手を付けるのは危険

当面の家計の目標としては、毎月の収支で赤字を出さないことでしょう。学習塾費用の削減と、後は雑費4万円をどれだけ下げられるか。細かい作業ですが、予算を立て、削ることができる部分はしっかり削るべき。大変でしょうが、ここが家族の頑張りどき。そして、ボーナスは全額貯蓄に回す。手持ち資金を少しでも増やしていくことを、今は最優先に考えてください。

と同時に、収入を増やしていく方向も模索してほしい。奥様のパート収入を増やすことがより現実的ですが、そのためにはクルマでのお子さんとご主人の送迎を削らなくてはなりません。そちらの交通や地理的状況はわかりませんが、学童を利用するなどの方法はないのでしょうか。

気を付けたいのは「教育ローン等の利用で借財も増えてしまうばかりではないかと怖い思いです」という点。これ以上、ローンを増やすことは避けてください。あまりにも危険です。固定費を増やすことは、家計を苦しくする大きな要因となります。奨学金利用も同様。その金額にもよりますが、お子さんに社会に出る前から大きな負債(多くの場合、有利子)を背負わせるということを認識しておくべきでしょう。

教えてくれたのは……

深野 康彦さん

業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

(文:あるじゃん 編集部)

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