【きらりと光るわが社の〝得意技〟】〈中嶋金属〉ピンホール発生させずに白金メッキ、燃料電池電極に応用

中嶋金属(本社・京都市右京区、社長・中嶋哲也氏)は1965年創業のメッキ加工業者で、従業員15名。「京都の伝統工芸である仏壇仏具の金メッキ装飾からスタートした当社は今日、多種多様なメッキ加工を展開している。とりわけ特殊かつ高度な技術が求められる金メッキ加工が得意」(中嶋社長)。

 例えばレアメタル貴金属メッキで5種(イリジウム・ルテニウム・ロジウム・パラジウム・白金)全てのメッキを手掛けているのは国内では同社だけ。ゲルマニウムへのメッキ加工も、国内オンリーワン技術だ。

従来のメッキ(写真左)と新技術の金メッキ・白金メッキ(写真右)

 自慢のメッキ新技術は2007年に開発に成功した、メッキ層にすき間(ピンホール)を発生させずに白金メッキ(金メッキ)できる技術。チタンなど金属素材に白金メッキした燃料電池電極だ。燃料電池は高価な白金を電極に使う。従来メッキは粒子が大きいためすき間が存在し、業界では全てのメッキでのピンホールの存在は必然だと認識されていた。

 「メッキ加工ではメッキ液の温度は一定に保つことが常識だとされていたが、あえて崩してみた。メッキ液の温度を約10段階で組み合わせ試作を重ねたところ、最小直径で約2ナノメートル(ナノは10億分の1)と、従来比で約十分の一の金属粒子を造り出すことに成功した。メッキ層は異なる大きさの金属粒子でいわば城の石垣のように形成され、内部金属と強酸性の電解質との接触を強固に防止する。高価な白金の使用量は百分の一以下へと抑制、大幅にコストカットができる」(同)。

 同社の独自技術は高く評価されている。2010年度の「京都府中小企業技術大賞」受賞、12年の内閣総理大臣顕彰「ものづくり日本大賞優秀賞」受賞、経済産業省の「13年関西ものづくり新撰」認定などはその一端だ。

 独自技術では、「注射針大の内径0・3ミリメートルの金属管内部への金メッキ」も持つ。この技術は抗菌性、耐久性、反射性が向上するため、デジタル機器や医療機器で利用されている。

 装飾・自動車・半導体・情報通信機器・医療・分析計測の6分野を手掛ける業者は業界でも同社が唯一。

 高度化する顧客の要望には、一品一様で対応している。メッキ液段階からの工夫や設備を自社で手掛けることなどが強みだという。

 「今後は航空宇宙、人工知能などの分野に進出したい。今後は、『メッキのメンテナンスフリー化』がカギとなる。誰もまだ為し得ていない究極の課題だが、チャレンジする価値は大いにある」(同)。(白木 毅俊)

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