富士屋旅館、来春再開 湯河原再生へ連携 横浜銀など5者協定

 温泉街の伝統と風情を生かして地域活性化を図ろうと、官民挙げた取り組みが湯河原町で本格始動した。廃業した老舗旅館を再生して近接するメイン通りの再整備や空き家・空き店舗の活用、公園や施設の利活用を検討。周辺の回遊性を高め地域の活性化を図る。

  同町は東京に近い温泉場として知られ、古くから著名人らにも親しまれてきた。だが近年は観光客数の低下が続き、2015年には約310万人(県調べ)と、20年前の約半分の水準。そこで、町の魅力を発信し、国内富裕層や訪日外国人客を取り込もうと、同町や横浜銀行など5者が手を携えた。

 目玉は「富士屋旅館」の再生事業。横浜銀が地域経済活性化支援機構(REVIC)などと共同で昨年3月に立ち上げた「かながわ観光活性化ファンド」の第1号案件だ。ファンドは旅館再生のために設立された特別目的会社に5億1千万円を投資し、横浜銀も改修費用などとして5億円を融資。同社は今月、従来のオーナー企業から旅館の土地・建物を取得した。

 富士屋旅館はJR湯河原駅から約3キロ離れた温泉街の中心に立地し、現存する数寄屋造りの建物は明治時代に建てられたという。高級旅館として知られたが2002年に営業休止し、以後、建物などがそのまま残されていた。今後は全面改修し来春の営業再開を目指す。全17室の宿泊施設のほか、レストランや図書スペース付きカフェを新設。再生後は、宿泊・飲食業の際コーポレーション(東京都目黒区)が運営する。

 また、横浜銀やREVICは同町や地元のまちづくり協議会などと連携し、メイン通りの「湯元通り」や周辺施設などの回遊性を高め、地域全体のにぎわい創出にも取り組む。

 29日、関係者が同町役場で会見し、冨田幸宏町長は「富士屋旅館が町のランドマーク的によみがえる。湯元通りなども含めた新たな再生に期待している」と述べた。横浜銀の川村健一頭取は「湯河原温泉と町全体のさらなる発展は心強い。こうした地域活性化への取り組みをさらに推進したい」と意欲を示した。

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