平塚市青少年会館（同市浅間町）内の軽食堂「たんぽぽ」が３１日で閉店し、４６年の歴史に幕を下ろした。周辺に立地する図書館や博物館などの利用者が気軽に集えた“オアシス”。午後３時の閉店時には、懐かしの味を記憶にとどめる有志ら十数人が訪れ、店主の菊池聰子さん（７７）との別れを惜しんだ。
「本当に長い間お世話になりました。皆さんの力があったからこそ４６年も続けられました」。営業終了後、会館を管理する市青少年課の職員から花束を贈られた菊池さんは深々と頭を下げた。
閉店を惜しむように、この１カ月は多忙になり、最終日も満席の状態が続いた。閉店の知らせを聞いたかつての利用客らが相次いで訪れ、名物のホットドッグや定食など「おばちゃん」の味を懐かしんだ。
来店者らの書き置きノートには、石川県や群馬県から訪れたとの記述も。「濃い緑色の野菜サラダがとてもおいしかった」「カウンターから明るい声を掛けていただき励まされた」との感謝を表す思いに加え、「明日から昼食はどこで済ませたらいいのか…」「廃業の廃止はありませんか」などと、継続を望む声もつづられていた。
菊池さんと横浜翠嵐高校時代からの友人で、４６年前の開店時にも訪れたという植野早苗さん（７７）＝川崎市幸区＝は、最後にジャージャー麺を注文。「当時は新しかった建物の古びた感じを見たら、４６年間の長さを感じる。冷房もない厨房（ちゅうぼう）で頑張ったんだなと思う」と長年の労をねぎらった。
「この店でいろんな人に出会えて再会もできた。この上ない幸せでした」と菊池さん。気丈に明るく振る舞った声は、最後にかすかに震えた。
