【JFE溶接鋼管がスタート】小径電縫管事業の中核担う 最適生産体制、営業面でのシナジー追求

JFE鋼管と川崎鋼管の統合新会社JFE溶接鋼管(本社・東京都中央区、社長・石川逸弥氏)が4月1日にスタートした。10月に統合予定のJFEスチール知多製造所の小径電縫管ミルと合わせ、JFEグループの小径電縫管事業の中核を担う専業メーカーとして自動車・産業機械・土木・建材向けなど幅広い需要分野に製品を供給する。今後は各製造拠点での最適生産体制の構築、親会社を含めた営業面でのシナジー効果を追求していく。

 JFE鋼管は1949(昭24)年創業の三瓶金属が前身。68年に旧NKKの系列に入った。73年に鋼管建材に社名変更。JFEスチール発足後、2005年にグループの溶接鋼管事業再編で現行体制になった。製造拠点の姉ケ崎製造所(旧本社工場、千葉県市原市)には4ラインあり、中間外径以下のレンジで比較的肉厚の薄いサイズを生産している。

 川崎鋼管は47年創業。84年に旧NKKが資本参加し、現在はJFEスチールが100%出資している。製造する鋼管の約6割が自動車部品向け。外径対肉厚比(T/D比率)20%以上の小径厚肉電縫管の製造が得意分野で、製造拠点は伊勢原工場(神奈川県伊勢原市)と磐田工場(静岡県磐田市)がある。

 今年10月に統合予定のJFEスチール知多製造所の小径電縫管ラインは4インチ、6インチの2ミル。このうち4インチミルでは、高機能・高加工性鋼管のHISTORY(ヒストリー)鋼管を製造している。

 全体の売上高は約140億円で、年間生産量は約15万トン。特にSTKM(機械構造用鋼管)の比率は、全体の4分の1程度を占める。JFE鋼管では昨年、STKM生産対応を強化するため、4インチミル(3号ミル)の精整ラインを改造している。サイズレンジは、丸管で口径19ミリ~267・4ミリ、角形鋼管で50~200角(最大板厚12・7ミリ)まで。

 今後はブランドの整理、統合両社の文化融合が課題となる。現行のOEM生産体制を含めて、マーケット動向を考慮しながらJFEスチール本体とJFE溶接鋼管の間でサイズや品種による棲み分けを検討していく可能性もある。

 旧川崎鋼管の製造拠点はそれぞれスリーケー製造所伊勢原工場、磐田工場となる。同社で製造していた製品およびサービスを「スリーケーブランド」として早期に確立させる。

 製造面では、JFE鋼管と川崎鋼管は従来からJFEスチールも含めて現場レベルで安全対策や人材・技能教育面の交流を積極的に展開してきた。今後も、若手・中堅を含めた各製造拠点間での相互交流は活発化しそうだ。

 営業面では、建材製品中心で特約店など一般店売り向けの取引先が多いJFE鋼管と、ヒモ付きメカニカル鋼管主体の川崎鋼管ではロットやオーダー構成などが大きく異なる。当面は両社の既存営業体制を踏襲していくことになりそうだが、将来的には店売り、ヒモ付き・直需の商流と主要需要分野の特徴を把握したオールラウンドな営業マンの育成が課題になってこよう。

 海外では、JFEグループとして自動車鋼管分野で初の海外事業である中国の嘉興JFE精密鋼管(JJP)に川崎鋼管が参画していた。新会社でも、川崎鋼管が担っていたオペレーティング業務は踏襲。また、JFEスチール本体では近年HISTORY鋼管の輸出にも注力しており、今後現地ミルを含めたJFEグループ内の電縫管海外・輸出戦略に新会社がどのように関わっていくのかが注目される。

 JFEグループとしてはJFE溶接鋼管を軸に、付加価値のある独自商品と技術、小ロット・短納期対応力などデリバリー面の強みを生かしながら小径電縫管分野での地位向上を目指すことになる。

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