<大ヒット盤> amazarashi『メッセージボトル』 社会見据えた視点から

amazarashi『メッセージボトル』

 全曲の詞曲を手がける青森県在住の秋田ひろむを中心としたバンドの約10年間をまとめたベスト盤。彼らの限定盤CDの多くは、詩集や小説とのセットだが、音楽中心の通常盤でも十分個性的だ。

 全26曲の多くが、重厚なギターロックと辛らつな状況を直視した歌詞で、それを秋田が時に静かに語るように、時に激しく叫ぶように歌うので、入門的作品ながら実は気合いが要る。それでも聴いていると、歌詞に「命」や「人生」が頻出し、実は強く生きたいからこその苦しみを吐露する内容が多いのだろうと胸が熱くなる。

 森羅万象の連鎖を表した初期の傑作『つじつま合わせに生まれた僕等』は、原曲と2017年版を同時収録。あどけない声ゆえの厭世観が薄まり、タフな声や演奏ゆえの前進が感じられる。

 社会を見据えた視点から、THA BLUE HERBなどのヒップホップ系や、中島みゆきなどのシンガーソングライターが好きな人にオススメ(3組とも北国出身は必然?)。本作を聴けば、言葉に心が通っているかが以前よりも気になるはず。

(ソニー・2CD 2800円+税)=臼井孝

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