金属行人(4月13日付)

ゴルフ四大メジャーの一つであるマスターズ・トーナメント。今年はスペインのセルヒオ・ガルシアの自身メジャー初制覇となる優勝で幕を閉じた▼1999年に同トーナメントでベスト・アマチュアになった後、19歳でプロ入り。当時タイガー・ウッズのライバルと目され、欧米で通算20勝以上積み重ねてきたスーパースターも、メジャー大会に勝つまでに18年間を費やした▼メジャーに勝てない日々が続き、一時は「引退」の二文字も頭をよぎったという。そんな彼を支えたのは周囲のサポートだった。今回の優勝スピーチで観客(パトロン)や家族、婚約者らへの感謝を述べる姿に、もはやかつての悪童ぶりはなかった▼日本の女子フィギュアスケート界をリードしてきた浅田真央選手が引退を表明した。メディアに〝国民のアイドル〟のように祭り上げられ、弱音や引退を口にしたくてもできない状況があったのではないか。自身で引き際を決めた顔には安堵感が垣間見られた▼なかなか収益が上がらない事業をどこまで頑張って続けるか、長く会社に貢献してきた熟練工、大番頭、ベテラン社員自らの引退時期など、大きな決断を強いられるケースは多くある。散り始めた桜に、改めて「引き際」の大切さと難しさを見る。

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